Kawaguchi

君たちはどう生きるかのKawaguchiのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.7
劇中でてくる全てのキャラクター、構造物は何かしらのメタファー。大叔父は高畑勲または手塚治虫、青サギは鈴木敏夫、主人公はもちろん宮崎駿、インコたちは我々「大衆」。

今作は。宮崎アニメ特有のダイナミズムを極力排除し、安易なカタルシスを与えない演出に徹している。音楽の久石譲もメロディを排除した劇伴。でも、最後まで見てしまうでしょう?と我々観客は試される。

ハウルよりも散文的に、
千尋よりも突拍子もなく、
ラピュタよりもファンタジックに、
もののけよりもシリアスに、
そして、紅の豚よりも官能的に。


戦争が続き、大勢の人々子供が死に、ご飯を食べれない人々がいて、地球環境は危機的な状況を通り過ぎて、人々は貶めあい、父親は傲慢で、新しい母親は自分を愛してくれてるかもわからず、、

しかし、眞人は現実世界に戻ってくるんです。「この世は生きるに値する」と宣言しながら。



映画はストーリーなんて無くて良いアートフォームなんだと改めて気付かされる。成功してるかどうかはおいておいて、すごい映画だよ。最高!大好き!スピルバーグの「フェイブルマンズ」と並び、今年ナンバーワン!


2023/11/17追記



やっぱり思うのが、
劇中のインコたちは「大衆」や「観客」そして、「ジブリを愛してる我々」なんですよね。だから醜いんです。そして、宮崎駿の分身である眞人を捕まえ、食べ、消費しようとする。だから宮崎駿=眞人は大衆のメタファーであるインコから逃げるんです。

それは、我々は宮崎駿のことを理解できないから。解釈はできたとしても、それは見当違いであり、理解はできていない。
それは宮崎駿本人すら自らのことが理解できていない「矛盾」の化身のような人物だから。そこに観客の割って入る余地などない。

この映画の大きなテーマのひとつが母性の話でもあるんですよね。この映画から思い起こされるの、セリーヌ・シアマ「秘密の森のその向こう」とクレイロの「Reaper」。

どちらも自分と同じ年だった母を想像して、母を理解する物語。このテーマについては、もう少し考える。
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