コウスケ

君たちはどう生きるかのコウスケのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.8
子供の頃、盆・正月はいつも父の実家・長野のど田舎で過ごした。
川でカニと遊び、家でおじいちゃんの戦争の話を聞いてるフリし、大きなトンボと一緒にテレビを見た。

山には、近所にいないセミがいた。
そいつを1匹捕まえたとき、家まで連れて帰って新たな生態系を作ろうと考えた。
今まで見たことのなかったセミが、近所にいっぱい増える。想像してワクワクした。

増えなかった。
でも映画「君はどう生きるか」を見てそれを思い出した。私はそういう生き方をしてきたし、たぶん今後もそうだな。

この映画はまるで鏡のよう。これはアート作品だ。
つまり鑑賞者のこの作品に対する反応がそのまま、その人の「君たちはどう生きるか」の答えなのだ。

この映画を見て「わからん」「難しい」と語る人は、他人の正解を求めて生きる人。

宮崎監督の意図や作品の意味ではなく、鑑賞者自身の内側に起きたことを語る人は、自分なりの正解を作る生き方をする人。

「さすが宮崎駿」とやる人は普段の生き方もブランドや肩書きに安心する人だし、
「ジブリっぽいか否か」「宮崎駿らしいか」を語る人は、新しさより「今まで通り」に安心するかもしれない。

「つまらん」など根拠薄く批判する人は「自分の理解できないものは悪」として生き、
逆に根拠薄く絶賛する人は、とりあえず平和に無難に場をおさめたい人かも。

事前にこの映画について賛否が分かれていると知り、「では私の好きな映画に違いない」と感じたのは間違いなかった。
アニメに抵抗のある私も見て良かった。アニメじゃなきゃ無理な表現だった。

宣伝せず公開したことや、映画の内容も含め、前例のないこと・監督本人も分からないことを実行するその姿勢自体もアートだな。
コウスケ

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