宮崎駿監督
ありがとう。ありがとうだこれは。
難解だとか酷評だとか賛否両論色々聞いてはいたものの、これのどこが難解でどこが駄作なのだろう。最高だった。
どうやら不確からしいこの世界を、目に見える形で、「そうだぞ、この世界は不確かだぞ。」と僕らに教えてくれた。
総じて悪にフォーカスが当たっているように感じる中で、それでも悪に立ち向かう、あるいは悪と共に生きる覚悟が勇ましかった。
罪の意識の無い悪や、行きどころのない自傷行為が目立った。
生と死を含む精神世界、この目に見えている現実世界、どちらもそこにあって、どちらかが空想に過ぎないかもしれなくて。
映画館の外に出て、世界はいつもと同じだった。
帰り道、約5キロの道のりをトボトボと歩いて帰った。
この日ののロンドンはあまりにも風が強く、そこら中に掲げられたパレスチナの国旗がパタパタと音を立て風になびいていた。目の前から歩いてくる男が小銭をせがみ、パブの前で煙草を吸うカップルがキスをしていた。どこかでビールの一杯でも飲もうかと思ったけど、なんとなくやめた。家に帰り着く頃には0時になるだろう。なんだか明日が来るのが楽しみに思えた。海よりも山よりもまだずっと深いところで、また会いたい。
