いずみたつや

君たちはどう生きるかのいずみたつやのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

宮崎駿の集大成。計り知れない期待や自身の引退を背負う難しい状況のなか、臆することなく自分を曝け出して表現と向き合った姿勢に感銘を受けました。かっこいい作品だと思います。

『千と千尋の神隠し』を分岐点に作家性が娯楽性を追い越していっているように見えるのですが、ここ2作は特に彼の狂気やトラウマなど暗部に踏み込む面白さがあります。

不寛容や暴力が蔓延り、他者との関係が希薄なこの世界でフィクションにいったい何ができるというのか?

剥き出しの葛藤を見せられ、宮崎駿でさえもまだ「答え」が見つかっていないのかと驚くとともに、人間味あふれる正直さに心を掴まれました。

無口な青年・眞人は自身の闇、世界の闇と向き合い、それでも社会の中で友達を作って生きると決意します。厳しい時代を生きる覚悟を決めた若者がカバンに忍ばせた大切な小説は、先の見えない人生の道しるべになるはずです。

フィクションに世界は変えられないかもしれない。しかし、フィクションにはこれから世界を変えていく世代の背中を押す力がある。これが宮崎駿監督の「答え」なのではないでしょうか。