しの

マダム・ウェブのしののレビュー・感想・評価

マダム・ウェブ(2024年製作の映画)
3.2
ソニー・ピクチャーズに招待頂き試写で鑑賞。アクション、キャラクター描写、主人公のドラマ、ヴィランの印象深さ、カメラワーク、オチの付け方、すべてに言いたいことがあるが、総体としてそこまで腐すほどでもないという何ともいえない映画だった。しかし、改めてロッテントマトの数字に踊らされるのは良くないなと思った。ユニバースとかミステリーとか、気構えずに観れば楽しめる。

いわゆるアメコミ映画としてではなく、ちょっとしたサスペンスみたいなノリで観るべき作品だなとは思う。というか自分はそれくらいの温度感だったので、主人公のアクションが基本的に車で轢くだけなのも、結果ヴィランがしょぼい印象になっているのも、コスチュームがパッとしないのもそこまで落胆せず。

ただ、それにしてもダメなところはいくつか挙げられる。まず、主人公がお守りをすることになる3人の少女たちがそこまで描き分けできておらず、言うこと聞かないガキみたいな描かれ方しかしかないこと。この3人である必然性が薄いし、主人公とも面白い絡みが発生しないので勿体ない。とはいえ、マダム・ウェブのヒーローオリジンとして割り切れば普通に観れるのだが、主人公が母親に対してどういう感情を抱いていて何が不なのかという描写が薄いので、終盤で彼女が自身のオリジンに向き合うくだりがやや軽く、これはこれで物足りない。観客にしてみれば母親に何が起こったか全て知ってるわけで、ミステリーにもならないし。

予知能力エンタメとしては、主人公の見るビジョンがどこで回収されるのかを期待しながら観るのは面白かったし、中でも地下鉄のくだりはなかなか緊張感があって良かった。ただ、グルグル回転させるカメラワークや、ジャンプスケアっぽいデカい音の多用は気になる。鳩のくだりを筆頭に説明台詞も多かった気がするし。クライマックスについても、満を持して主人公が自分の選択した未来を引き寄せるという展開なのに、結局あんまり面白いビジュアルにならず、序盤で見た予知をそのまま辿ってるだけに見えてやや残念。その上でラストのあの締め方なので、なんだかなとはなる。「続きが観たい!」より「始まってない!」が勝つ。

斯様に、微妙なところを挙げようと思えば色々と出てくるのだが、そこまで腐すような内容でもないと思う。少なくとも粗製濫造アメコミ映画だった『モービウス』よりは、これ単体のサスペンスとして観れる本作の方が自分は楽しめた。だからこそラストは何なんだとなるわけだけども……。
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