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マダム・ウェブのユウのレビュー・感想・評価

マダム・ウェブ(2024年製作の映画)
4.0
1)2024/2/24 IMAX字幕 イオンシネマ幕張新都心

 ソニー・ピクチャーズのスパイダーマン映画企画(SSU)第4弾。80点満点のフォーマットで60点を叩き出す。スパイダーマン系列のキャラクターの権利しか持っていないソニーがMCUの人気に便乗して作っているとしか思えない大企業の雑な仕事ぶりは、むしろMCU以前の愛すべきマーベル映画たちを感じさせてくれる。
 
 以前までのSSUはヴェノム、モービウスといった本来はヴィランの面々たちのダークヒーローものが占めていた。しかし、このマダム・ウェブはスパイダーマンのサポートキャラである。原作では盲目の老婆であるが、本作ではダコタ・ジョンソン(34)だからびっくり。2003年という設定からすると2024年には55歳になるが、果たして意味はあるのか...。彼女の能力は思いっきり未来視が主で、戦闘能力は常人程度である。そのためアクション要素はカースタントばかりなので、ミステリーの体で宣伝されている。まぁ、本格ミステリーを大人しくやるわけがなくミステリー“風”の微妙な映画に仕上がっている。
 
 ミステリーっぽさを演出するのはキャシーが備えている未来視にある。一種のタイムリープのような演出が施され、未来が見えるだけでなく、時空ごと巻き戻す感覚。ニコラス・ケイジの『NEXT -ネクスト-』(07)に近い。問題なのは、この能力を会得するのに映画はかなりの時間を費やしてしまうことだ。身体能力が常人並みの彼女が未来視によって強敵を倒すという、観客が観たいものをなかなか見せてくれない。彼女が未来視を完璧に使いこなすということは最後までなく、爽快感に欠ける。

 監督のキャリア的には『ジェシカ・ジョーンズ』に近いような他人を寄せ付けない嫌なやつがキャシー。子ども嫌いという設定をいいことに助けた子どもたちにかなりキツい態度をとる。森に放置したり、同僚の家に預けたりと絶対守ってみせるというヒーロー感が全くない。バカと評されるキャシーの理由は多分ここにある。

 それでも言葉には言い表せないまさに00年代の味が滲み出ており、不思議と受け入れてしまう。ダコタ・ジョンソンネキに加え狙われるガールズたちも痒いところに手が届く絶妙なキャスティング。タハール・ラヒムの使い方はデビット・テナントのパープル・マンのような気持ち悪さがとても良い。選曲のセンスも抜群で、なんでも許せてしまう。壁を這おうとするダコタ、ナンバープレートなしのパクったタクシーを乗り回すダコタ、メガネをかけるタイミングが絶妙なシドニー、「イキる」のオコナーと笑えるポイントが幾つもあって肩の力が抜ける。と思えば、スパイダーウーマンたちはあの登場時間で確実に記憶に刻まれた。映画の存在自体も大いにネットでネタにされている。MCUが下火になり、『マーベルズ』がしっかり予算をかけて酷かったことを考えると、やっぱりSSUの予習要らずのこの感じが懐かしく愛おしい。
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