サマセット7

シティーハンターのサマセット7のレビュー・感想・評価

シティーハンター(2024年製作の映画)
3.8
Netflixオリジナル配信映画。
監督は「キサラギ」「累」の佐藤祐市。
主演は「変態仮面」「俺物語」の鈴木亮平。
原作は北条司による同名コミック。

[あらすじ]
東京・新宿にて、凄腕のスイーパー(トラブル解決屋)の冴羽獠(鈴木亮平)は、行方不明者を探す依頼をこなす中、相棒の槇村秀幸(安藤正信)を失う。
槇村は自らの妹である香(森田望智)を守ることを獠に頼むが、香は獠に兄の復讐の手伝いを求める。
しかし、スケベな獠は女遊びを繰り返すばかりで香の依頼に取り合わす、香を苛立たせるが…。

[情報]
2024年4月25日にNetflixで配信開始された日本の映画作品。

北条司による原作コミックは、1985年に週刊少年ジャンプで連載開始された人気コミックで、単行本累計発行部数は5000万部を超えるという伝説的漫画。
1987年以降原作者も深く関わる形でテレビアニメ化されて、シリーズを重ね、国内外で広く人気を博した。
テレビアニメ一期のエンディングテーマ歌であったTM NETWORKの「Get Wild」は、アニソンを超えて時代を代表する曲、と評価されている。

既存の実写映画版は、1993年のジャッキー・チェン主演の香港版と、2019年のフィリップ・ラショー主演のフランス版がある。
国内での実写化は、今作が初。

[見どころ]
怪優・鈴木亮平の演じる冴羽獠!!!
その「もっこりダンス」!!!
鍛え抜かれた肉体と、キレのあるアクション!!
令和の風俗と、80年代コミックの設定をマージさせた脚色!!!
原作・アニメファンへの目配せ!!
笑いあり、涙あり、サービス精神満点!

[感想]
楽しんだ!

原作を通しで読んだことはなく、主要登場人物のキャラクターや設定を知っている程度の知識で臨んだが、十分楽しめた。
原作コミックで言うと、概ね一巻の香登場のエピソードを中心に、アニメ版ではオミットされたと言う特殊な薬物「エンジェルダスト」を中心にオリジナルの展開を加えて、1時間40分にまとめている、と思われる。

コスプレ、パワハラ、インスタグラムといった今時の風俗を織り込み、80-90年代の原作を令和の時代にコンバートしているあたり、製作者の苦心の跡が見える。
特に女に目がなく、セクハラ的な言動が多い冴羽獠というキャラクターを、魅力をオミットすることなく、ぎりぎり今の視点で見て嫌味がない、というバランスで、コミカルに描いている。
その結果、今時の時代ではなかなか他に見ない、振り切った女好きでスケベなキャラとなっており、逆に新鮮で面白い。

鈴木亮平は、大河ドラマ主演歴もある人気俳優だが、女性用下着を頭に装着して脅威の肉体を披露した「変態仮面」を始め、振り切った演技もできる俳優。
今作でも、人気キャラクターを快演/怪演しており、今作の大きな魅力となっている。
特にもっこりダンスの切れ味の鋭さたるや、さすが、変態仮面、というものだ。

漫画のキャラクターをそのまま実写化すると、面白さよりも違和感が前に出て、居た堪れなくなることもある。
しかし、今作ではマンガ的描写がそのまま面白さに変換されているように思えた。
獠の超現実的な射撃の腕前しかり、決まりすぎて面白くなってしまう「かっこいい」セリフしかり。
他方で、原作の核心となるような、漫画ならではの描写、例えば「もっこり」だとか、1トンハンマーで香が獠を殴るお約束だとかは、実写化にあたって、違和感が出ないように調整されている。
この辺りのバランス感覚は、うまくいっていたように思う。

香、冴子といった作品を代表する女性キャラクターたちも、それぞれ森田望智、木村文乃が好演。
特に香は、獠のヒーローとしてのカッコ良さの鏡となる重要なキャラクターだが、本心を吐露するシーンの演技には引き込まれた。

全体として、コミックの映画化作品としては、成功しているのではなかろうか。
1時間40分というサイズも、見やすくて良い。

[テーマ考]
今作は、週刊誌連載された少年漫画原作作品であり、突き詰めれば、ヒーローのカッコ良さという快感を読者に与えること、がテーマとなる。

特にシティーハンターでは、一見スケベで女好きで遊び人の冴羽獠が、実は決めるところは決める殺しの達人であり、さらに情義に厚く、亡き親友との約束を固く守る、というギャップ、がカッコ良さの核心である。

今作でも、このギャップのカッコ良さは、踏襲されている。
コメディに振り切ったキャラ描写、超現実的なアクション描写、槇村兄妹にまつわる人情描写は全て、このギャップの表現に奉仕している。

[まとめ]
伝説的なコミックを、令和の時代に甦らせた、漫画原作映画の佳作。

ワンピースのドラマ化といい、漫画の実写化、というのは、Netflixの最近の狙いなのだろう。
このクオリティで出来るなら、今後も続けていただきたい。