みやび

殺人に関する短いフィルムのみやびのレビュー・感想・評価

殺人に関する短いフィルム(1987年製作の映画)
4.6
「モーゼの十戒」をイメージし全10話の1話完結型で構成したTVシリーズ『デカローグ』第五話のロングバージョン。

本作の登場人物は大きく分けて3人。
妹をとある事故で失い村から都会に出てきた青年、自己中心的なタクシー運転手、正義に燃える新米弁護士。
本来ならば出会うはずのない彼らの運命はいくつかの偶然が重なり「殺人」として結びつく。

「汝、殺すなかれ」
本作のテーマは暴力そのもの。
暴力の行使とはそれぞれが加害者となりまた被害者ともなる同等なもの。
加害者を救うための立場の人間にも死刑という判決は避けられず加害者となってしまう残酷さを見せつけてくる。
一方通行な「善悪」ではなく、両方がどちらにも成り得るということが描かれている。
人間に暴力で勝つ人間と法に負ける人間。

キェシロフスキ監督は法と人との関係を作中様々な方法で表現する。
これが彼の作品の魅力のひとつだ。
やはりキェシロフスキ監督作品はポーランドという国の歴史を知った上で観ると理解が深まる。
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