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死体の人のプライのレビュー・感想・評価

死体の人(2022年製作の映画)
3.3
死体役ばかりを演じる売れない役者とデリヘル嬢の周辺で巻き起こる、生と死を巡るコメディ&ドラマ。

死体役の仕事は死を演じること。デリヘル嬢の仕事はセックスをすることであり、セックスは命を作る行為である。死の行為と生の行為を業務内で完結し続けてきた者たちが本物の生死と向き合うことに接続されていく設定の妙があるが、物語の展開には上手く活かされず。主人公が「死体役ばかりを演じる売れない役者」という設定は斬新であり、主人公を演じた奥野瑛太さんが未だに見たことない職人気質を見せてくれるが、ドラマの面では昔から繰り返されている人間模様の枠内に収まっている。ドラマに新しさがなく、主人公の斬新な設定で引きつけた後は頗る相性が悪い。また、唐田えりかさん演じるデリヘル嬢に心境変化のグラデーションがなく、急に物事を決意するため、表面的な人物像にしか映らない。

とはいえ、主演の奥野さんと唐田さんの演技は申し分がない。奥野さんからは、死体役にリアリティを注ぎ込む姿勢から俳優業への熱意を感じ取られる分、売れずに燻っている現況に観てる我々が寄り添える人物となっている。また、死体の役づくりに励む姿はコミカルで笑いもある。唐田さんは表面的な人物像になってしまって内面が見えてこないが、表立った感情を伝える姿や奥野さんとのコミカルな掛け合いは、唐田さんの技量を観るという目的なら楽しめる。


⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐
演出・映像   :⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐
設定・世界観  :⭐⭐⭐
星の総数    :計13個
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