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聖なる復讐者のCINEMASAのレビュー・感想・評価

聖なる復讐者(2022年製作の映画)
3.3
【親に捨てられ、多額の借金を背負わされた双子の兄弟。クリスマスの朝、コンビニでアルバイトをしていた発達障がいを抱えた純真な双子の弟のウォルの遺体が貯水槽から発見される。イブに暴行されて殺害されたようだ。闇バイトで生計を立て、必死に暮らしていたイケメン兄のイルは復讐を胸に、事件関係者が収容されている危険な少年院に潜り込む。法が裁けないなら俺がやる!!】というスジ。

 韓国産のサスペンス・ドラマ。主演はGOT7のパク・ジニョン。双子の兄弟を二役で熱演している。この作品で百想映画大賞の男性新人演技賞とTikTok人気賞をW受賞。監督はクォン・サンウ&ユ・ジテ主演の『美しき野獣』や、西島秀俊主演の日・韓合作『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』のキム・ソンス。原作はチュ・ウォンギュが社会の暗部に焦点を当てる小説<『Antihuman Declaration(反人類宣言)』>の2作目との事だけれど、いずれも未邦訳。

 原題は『CHRISTMAS CAROL』。発達障がいを抱えた子の弟が愛唱しているのが『クリスマス・キャロル』だからである。でも、これを邦題にしてしまうとファミリー映画と勘違いされそうだからなあ。といって『聖なる復讐者』はちょっと違うような気がする。『復讐のクリスマス・キャロル』、『聖夜の復讐者』とした方が良かったような……

 はい。この映画、胸糞悪いです。少年院入所者のクズたちを初め、暴力と威圧で入所者を支配する極悪教官やその手下である教官・刑務官たち。彼らの横暴振りも胸糞だけれど、それだけじゃあないんです。

 一方、入所者(特に主人公)への教育・更生に熱心な教官(キム・ヨンミン。風間トオル似)も居る。彼は生徒たちにカウンセリングを行い、イルには「復讐なんかするな。くそったれになってしまう」と言う。対してイルは「それでくそったれになってしまうなら、俺は喜んでくそったれになるさ!」と答える。劇中では「シバっ!!」という言葉が乱発される。これは「くそが!!」という意味で、恐らく英語で言うと、「ファック!」、「シット!」なんていう4ワードスラングに近いものなんだろう。

 この作品、実は意外な人物が犯人なんですが、僕、途中で「あー、コイツ、なんか臭うなー」と察しがついてしまって、しかもその予想のまんまの真相であったという。しかも、障がい者少年に対する性的虐待や暴力が盛り込まれているので、結構にキツい。胸糞、胸糞。でも、出来は悪くないよ。

 で、僕、この映画を観ていて、途中で泣いちゃいましてね。勤めているコンビニに暴漢少年グループがやって来て、ボコボコにされたウォルが、グチャグチャにされた店内の商品を並べながら「クビにされたらどうしよう…… 弁償しろって言われたらどうしよう!! 携帯が無い! 兄ちゃんに連絡が取れない! ウワーっ!!!」となりながらも、必死に涙を堪えるシーンと、その後、体中の痛みを堪えながら街をフラフラと歩きつつ『クリスマスキャロル』を歌うシーンでグッと来た。

 障がい者を扱った映画は、韓国映画に多いという印象があるけれど、本作とか『連鎖』とか、あと感動ドラマだけれど『オアシス』とかね。よく出来ていますよ。本作は秀作かというと、そこまででは無いけれど、決して悪く無い。重ねて言うけれど、胸糞悪いですけどね。観られて良かった。封切時にちょっと気になっていて、「あー、これ、新世界国際劇場には来ないかもなあ……」と思っていたのに観そびれてしまっていたのだけれど、今回、掛けてくれて嬉しかった。うん、観られて良かったです。しつこいようだけれど、胸糞映画なんだけど、兄弟愛がね、泣ける……
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