湯っ子

さよならミス・ワイコフの湯っ子のレビュー・感想・評価

さよならミス・ワイコフ(1978年製作の映画)
3.7
とても消化が難しい作品。
ミス・ワイコフの生活歴や人となりであったり、当時のアメリカ中西部の空気を丁寧に描いていてドラマとして見応えがあるし、彼女が何を考えていたのかということにも掘り下げる価値のある作品だと思う。
だけど、レイプをポルノ的に扱っている向きがどうにも引っかかる。ミス・ワイコフをレイプする黒人学生が極悪すぎて、演じる役者さんの方が気の毒になってしまうくらいだった。
白人と黒人が同じ食堂を使うのも許されない50年代のお話。この黒人の学生が受けている差別や苦悩までをきちんと描き、ポルノ的な演出がなければ、もっと評価の高い作品になったのでは。
マルクス(私はよく知らないので、ネットで簡単に調べたことがあるだけなのですけど)を高校で教えた先生がアカだと糾弾されるような風潮が、この時代のアメリカにあったのを知ることもできた。
正しいとされる価値観、というか後ろ指を指されないための価値観に縛られた窮屈な町で暮らす人々の様子には哀れさえ感じ、そこからはじかれても誇り高く前を向くミス・ワイコフの姿には心を動かされた。
これは女性監督にリメイクしてほしい。性愛表現にフォーカスするならジェーン・カンピオン。母娘の確執要素もあるから、そこにフォーカスするならグレタ・ガーウィグも良いかもね。
湯っ子

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