まや

私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは・・・のまやのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

言葉が浮遊するそんな不思議な映画体験ができる挑戦的な作品で割と好きだった。

登場人物に名前がなく、ある女が男の残した写真を頼りに何かを探す物語。その途中で出会うさまざまな人との会話とも言えない会話によって映画は進んでいく。

渋谷の歩道橋、浅草の橋下、豊洲などロケ地と思われる場所が自分に馴染み深くてその場所が美しく映し出されるだけで自分の記憶が呼び起こされて少し泣いてしまった。

セリフの掛け合いのようでまるで噛み合わない会話と、意味があるようで意味のない言葉の羅列。主人公は語り手ではなくただ何かを探している様子でその行動を観客はただ追っていく。

観客は言葉に意味はないけどそれをどうにか意味を持たせたくて頭を働かせる。意味を見出すのは難しいけどすごく感覚的に共感できるセリフがいくつかあって面白かった。自分の過去を引き摺り出される作品だった。

光と影の使い方も絶妙で物語の終盤にはほぼ夜で役者さんの顔は見えず少ない光の中で言葉が流れていく。その対比で朝の美しい光とその光を反射する海。その海に主人公は男の残した写真を捨てる。ある種の吹っ切れのように。帰るとと男の形跡はない。

きっと人はずっと何かを探し続けるのだろう。何かもわからないまま。

傷、探し物、見えるもの見えないもの、社会の真実、世界の真実、生と死、孤独、言葉の可能性と不可能性。そんな答えのないけど人が生きていくためにとても密接なものに向き合っているように感じた。
こういう答えのないものをあれこれ考えるのがとても好きな私には面白く感じた。

終映後、トークショーを聴いて、今までにない映画の良さを引き出したいという監督の意図を聞けて面白かった。だけど、割と独りよがりな感じは否めないなと思った。
観客あっての映画だと思っているのだが、自分そのものをむき出しにしてる感じが受け入れ難い人もいるのではないかなと思った。

でも今までにない映画体験私は良かったです。夜の公園を散歩して答えのない言葉の羅列を誰かとしたいなと強く思った。
まや

まや