ハル

朝がくるとむなしくなるのハルのレビュー・感想・評価

朝がくるとむなしくなる(2022年製作の映画)
4.0
公開記念舞台挨拶にて。
ひたすらに優しい雰囲気に彩られた、とても好きな作品。
事件なんて何も起こらず、淡々と小さな幸せの光が集りゆくような、穏やかさと癒やしに満ちたお話。

仕事を辞め、コンビニでバイトをはじめた希(唐田えりか)
慣れない仕事、当たりの厳しいお客、シフトに追われる毎日。
なんの生産性もない日々が過ぎ去っていく。
生きていたらうまくいかないことや思ったとおりにならず、全てを投げ出してしまいたくなる時があるよね。

そこへ昔の同級生が現れ、二人でボーリングに行ったり、実家でお泊りして悩みを打ち明け合ったり。
希にも少しずつ笑顔が戻ってくる。
加奈子(芋生 悠)の希への寄り添い方が素晴らしすぎるんだ。
否定も肯定もせず、ただ話を聞いて一緒に時間を過ごしてくれる存在。
かけがえのない“宝物”
二人の関係性を見ているだけで幸せな感情に包まれた。
唐田えりかと芋生悠はリアルでも友人らしく、関係性の自然さがスクリーンにもくっきり表れている。
会話のテンポの心地よさと相性のピッタリ加減に見ているこちらまで微笑ましい気持ち。
二人のビジュアルもめちゃくちゃNICE!

コンビニの仲間も良い人の集まり。
イケメン大学生に恋心を抱き、また小さな幸せがフワッと出現。
“ヒトを大切に思える”人達との出会いによって、後ろ向きだった希も前を向けるようになる。
心の再生に必要なのは平穏に過ごせる時間と心許せる存在なんだな。

そして、希は一つの決心をした。
橋の上でお母さんに仕事をやめた事を伝えるシーン…なみだなみだ。
自身が恥ずかしくて、惨めで伝えられなかった本音。
お母さんからの返答が優しすぎて、“親のあるべき姿”ってこれだなぁと。
見る人によっては退屈に感じてしまうかもしれない。
でもね、ボクはこうした押し付けのない自然体な作風がたまらなく好き。

心が疲れた時にはちょっぴりお休みをしよう。
温もりに触れる大切さをゆっくりゆったり諭してくれる、慈しみの会話劇でした。
一息つきたい時にオススメの一作。
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