寝耳に猫800

朝がくるとむなしくなるの寝耳に猫800のレビュー・感想・評価

朝がくるとむなしくなる(2022年製作の映画)
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唐田えりかと芋生悠が実家で語っていること、この映画が映したいことには痛いほど共感するのだが、残念ながらそこにある言葉以上のものは自分の目は見ることができなかった

個人的には、2人に「自己肯定感半端ないギャル」と評されていた安倍乙、自らのパートナーを「メガネ」とネタにし、バイト先の先輩からのセクハラまがいの「揶揄い」をひらりとかわしていた彼女が、一人でいる時一体どんな顔をしているのか、どんな気持ちで朝を迎えているのか、本当に「自己肯定感半端ない」のか、そちらに興味があったかも

ただ、極めて私的な映画であり(映画はみな私的なものであり同時に普遍性をもつものだけども)、この作品を作った人、この物語の人物と同じような境遇に置かれている観客を救っていることがあれば、もうそれで充分でもある気がする、それくらいゆっくりとした空気の流れた優しい映画

四六時中パソコンに向き合っているのに絶望的にシフトを組むのが下手な店長により、いつもいつも店員と客の数にズレがあるのが面白い(おまけにエンドロールの主題歌で「埋まらないシフト」と聞こえてきた時は笑ってしまった)

明らかに最初からカーテンレールを破壊しにかかっている手、明らかに最初からガターに身体が向いている唐田えりかは、首をかしげることでようやく社会とのピントが合う、そういうぎこちなさはこの映画の雰囲気を支えていたように思う