れおん

朝がくるとむなしくなるのれおんのレビュー・感想・評価

朝がくるとむなしくなる(2022年製作の映画)
4.5
会社を辞めて、コンビニでアルバイトをはじめた。広告系の会社で営業をしていた。会社を辞めたことは両親には伝えていない。「大丈夫です」が口癖... 飯塚希・24歳。わたしは今まで、そういう夢とか目標とか、何もなかった。朝がくるとむなしくなる何も起きなかった日常が、彼女の心の中でそっと動き出す。

「なんか、いろいろ大丈夫?」その一言のメッセージが、現代の少年・少女の心を揺さぶる。心地の良い映像と音楽で切り取った世界に、唐田えりかという少女がそこに存在している映画。石橋夕帆監督の人としての繊細さや情緒が、映画として表出している。

『寝ても覚めても』からさらに磨きがかかった唐田えりか。目線、仕草、言葉の重み。彼女にしか演じられない世界観みたいなものがあって、現代の若者の心の機微を具現化させる存在として、『寝ても覚めても』やこの映画との出会いは特別なものである。この先、違った世界の切り取り方をする他の監督と多く作品を残してほしいと切に願う。

人がその人なりの人生を歩む上で大切な夢や目標。その道筋を支える具体的な行動様式の一つに、企業に就職して仕事をするというものがあるが、果たしてその行為が直接に自身の夢や目標に繋がるものなのだろうか。ときに無意味な時間とも捉えられる事柄に明け暮れ、そこに見出される価値によって、新たな人生を切り開くことができるかもしれない。むしろそのような出会いにこそ、人類普遍の美しさが詰まっているものだと信じたい。
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