てっぺい

キングダム 運命の炎のてっぺいのレビュー・感想・評価

キングダム 運命の炎(2023年製作の映画)
4.0
【燃える映画】
原作を見事にアレンジ、王の燃える思いがよりずっしり伝わり、涙腺崩壊。壮大なスケールで描かれるアクションにこちらも心が燃えるよう。俳優陣の、炎燃え盛るような熱の入った演技にも注目。

◆トリビア
○前作、前々作はいずれもその年の実写邦画作品興収1位を記録、累計で100億円を突破している。(https://kingdom-the-movie.jp/intro/index.html)
○原作漫画の単行本は2023年7月時点で69巻まで刊行され累計発行部数は9,900万部となり、1億部まであとわずか。(https://kingdom-the-movie.jp/intro/index.html)
○山崎賢人は飛信隊に演説するシーンで、今までの信になかった隊長としての強さ、戦を乗り越えてきた男の説得力が出せるよう、表現したという。(https://www.entax.news/post/202307111630.html)
「この4、5年は『キングダム』と一緒に生きてきた。作品や役柄から教わることもたくさんあるし、自分の人生そのものだなと感じています」と語る。(https://natalie.mu/eiga/news/531484)
〇山崎賢人は本作の中国ロケ出発時、パスポートを忘れ出国できなかった。予定していた便は、チームが全員登場する中、1席だけ空いていた。(https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2023/07/20/kiji/20230720s00041000623000c.html)
○吉沢亮に対して監督は次のように語る。(嬴政には)過去を辿ると物凄く熱いドラマがあった。それを秘めた上でここに立って、指揮をしている。(吉沢亮は)玉座に鎮座する際、“国王”としてそこにいる自分と“役者”としてそこにいる自分があり、自分を奮い立たせていたそう。内心はいろいろ葛藤していて、それは嬴政がいろんなことを思いながらそこにいる心情と繋がっていたのだと思いました。(https://screenonline.jp/_ct/17644814)
〇大沢たかおは役作りのため、1作目で18キロ、本作でさらに30キロ増量。体が大きすぎて、通常の出入り口から入れず、彼のためだけにシャッターを開けてスタジオ入りした笑。(https://www.youtube.com/watch?v=2Nh9T2YSR6U)
ただし本人曰く、増量は役作りの1~2割。残りの8~9割の要素は、王騎の精神性を考え、表現する事で、約1年ほど準備期間を費やした。異物感であることの面白さ、強さとは何なのか、将軍とは何なのかといったことを突き詰めたところにあるのが王騎だと語る。(https://www.cinematoday.jp/news/N0138129)
〇紫夏を演じた杏は、自身の産後初めて見に行った映画がキングダムだった。本作のプロデューサーは、紫夏がキングダムの魂の根幹であり、その存在感だけで、正しく誠実である人柄が出てくる人物として、迷いなく杏にオファーしたと語る。(https://realsound.jp/movie/2023/03/post-1282077.html)
〇羌瘣を演じた清野菜名は次のように語る。「目から感情が伝わるようにお芝居をしました。悲しみに満ちた状態から、少しずつ人間らしさを取り戻していく感じに。アクションは、人間離れをした動きをする役なので、『今、何が起こったのだろう?』と思っていただけるように、しなやかに舞うようにしています」(https://www.zakzak.co.jp/article/20230726-JVMDT3AEDVPVZDL6H5QQHXDLX4/)
〇本作のオフィシャルガイドブックが7月31日より発売。山﨑賢人×吉沢亮の撮り下ろし対談や、吉沢亮と杏のソロインタビュー、撮影現場のメイキング&オフショット集、原作者からのメッセージ&描き下ろしイラストなどが収録されている。(https://youngjump.jp/kingdom/photobook/)
〇本作の展示会が、7月28日から8月18日まで全国5都市のソニーストア(東京、名古屋、大阪、福岡天神、札幌)で開催。会場では撮影で使用された衣装やコンテが展示される。来場者には先着順で「秦国旗ステッカー」が配布される。(https://natalie.mu/comic/news/533891)

◆概要
原泰久の人気漫画を実写映画化した大ヒット作「キングダム」シリーズの第3作。
【原作】
原泰久『キングダム』
【脚本】
黒岩勉、原泰久(前作、前々作に引き続き原作者自ら脚本に参加。原作コミックスとは異なる、映画オリジナルのシーンやセリフが加筆されている。)
【監督】
「GANTZ」佐藤信介(第1作、第2作から続投)
【出演】
山崎賢人、吉沢亮、橋本環奈、清野菜名、満島真之介、岡山天音、三浦貴大、杏、山田裕貴、高嶋政宏、要潤、加藤雅也、高橋光臣、平山祐介、片岡愛之助、山本耕史、長澤まさみ、玉木宏、佐藤浩市、大沢たかお
【公開】2023年7月28日
【上映時間】129分
【主題歌】
宇多田ヒカル「Gold ~また逢う日まで~」

◆ストーリー
春秋戦国時代の中国。天下の大将軍を志す少年・信(しん)は秦の若き国王・えい政(えいせい)と運命的な出会いを果たし、ともに中華統一を目指すことに。魏との戦いに勝利をおさめた彼らのもとに、秦に対して積年の恨みを抱える隣国・趙の軍隊が攻め込んでくる。えい政は長らく戦場から離れていた伝説の大将軍・王騎(おうき)を総大将に任命。王騎から戦いへの覚悟を問われたえい政は、かつての恩人・紫夏(しか)との記憶を語る。100人の兵士を率いる隊長となった信は、王騎から「飛信隊」という部隊名を授かり、別働隊として敵将を討つ任務に挑むが……。


◆以下ネタバレ


◆紫夏編
月を見上げる嬴政から始まる冒頭。月を見ながら嬴政が紫夏に心を開き、通わせていく紫夏編に本作が重きを置いていることがこのオープニングで分かる。ところどころ原作より端折られているものの、要所を効果的に残しむしろ強調していた脚本が素晴らしい。紫夏の深手の傷を負いながらの“殺させない”は本作の方が断然心に響き、思わず涙してしまうシーンだった。最高のアレンジは、過去の嬴政のセリフの回想が入った事。嬴政と信が出会った頃の“俺を守るために死んでいった人間が少なからずいるからな”のセリフが紫夏に重なり、嬴政の思いの深さがさらに増す。まるで「ペイ・フォワード」('00)のような“受けた恩恵を次の者へ”を信念に持つ紫夏、その犠牲に報いるように交わした嬴政の約束も、重みが増して見えた。個人的には、紫夏の父の言葉“お前がこの先他人のために何かできたらそれは私にとっても大きな意味を持つ”を端折っていなければさらに嬴政の思いが深く描けていたと思った。

◆馬陽の戦い編
紫夏編から一転、壮大なスケールの戦のシーンへ。まるで蒙毅や河了貂の目線に入るような俯瞰の映像は、幾万の人間が動く圧巻のスケール。「ボヘミアン・ラプソディ」('18)でスタジアム俯瞰からステージに一気に寄るような、本作の大俯瞰からの趙軍陣営までズームしたシーンが鳥肌モノだった。馮忌を演じた片岡愛之助がまるで見栄を切るような表情のモノローグだけで、他に見せ場なくただ斬られたキャラになってしまっていたのはいささか残念だが笑、王騎の“ココココ”が一瞬だけ見れたのはよかった笑。騰との“マンのマンマン”のくだりは本作オリジナルか、若干浮いていたけど笑えたし、“全軍前進”の一言で軍が沸くシーンも鳥肌モノ。アクションそのものも楽しめたし、信と王騎が嬴政の背景を知った上で戦に臨むという本作のアレンジが、仕える王のためにとなおその剣に力がみなぎるようで、本作の脚本の妙がここにキラリと光る。

◆目
紫夏が“殺させない”とカメラに正体で叫ぶカットは、演じる杏の表情、特に目が本当に力みなぎるようで、さらにどこかとても“キングダム”っぽい彼女のそもそもの顔の作りも相まって、奇跡のカットと思えるほど素晴らしかった。紫夏に抱かれた嬴政は、痛みも感じない闇堕ち状態から人の温もりを初めて受ける難しい場面を、涙を落とすでもなくジワリと涙腺に浮かべる絶妙な目の演技。紫夏の話を嬴政から聞き出す前と後で、王騎は眉間にシワが少し寄り、微妙に表情を変えていて、中華統一への王の思いをずしりと受け取る、これも素晴らしい演技だったと思う。原作をただなぞらず、うまく凝縮してアレンジ、さらに俳優陣の演技力も光る、また素晴らしい作品に一つ出会えました。

◆関連作品
○「キングダム」('19)
コミックス第50巻達成を記念して実写映画化されたシリーズ第1作。原作の第1〜5巻にあたる。プライムビデオ配信中。
○「キングダム2 遙かなる大地へ」('22)
前作。原作の第5〜7巻。前作同様、その年の実写邦画興収1位を記録。Netflix配信中。
○「キングダム」
原作漫画。第7〜13巻が本作の内容にあたる。各電子書籍販売中。

◆評価(2023年7月28日時点)
Filmarks:★×4.0
Yahoo!映画:★×3.6
映画.com:★×3.8

引用元
https://eiga.com/movie/98574/
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/キングダム_運命の炎
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