若き王・嬴政(吉沢亮)脱出劇の回想で紫夏(杏)に励まされる優しい話から緊迫の馬車アクションへ運ぶストーリーの起伏に本シリーズの良さが凝縮して表れている。
どん底状態から味方の奮闘に鼓舞され天下取りへ立ち上がるまでを亮が見事に表現しており、覚醒した瞬間の嬴政の姿には心震えずにはいられなかった。
そして、紫夏役の杏が実に良い。美しく優しく、凛々しく頼もしい。ずるいくらい魅力的なキャラにして世界観に奥行きを与える重要なゲストキャラを素晴らしく全うしている。
そんな本作、ちょっとだけ気になる点をあげると、一部場面だが明らかにCGとわかる映像の質が残念なこと。
それから、国が滅亡するかもしれないのにその切迫感があと一歩伝わってこないこと。
また、明らかに続編を前提とした作りは連続ドラマ途中回のような未消化感が拭えないこと。
とはいえ、突然の侵攻を将軍の才覚で乗り切ろうとする頭脳戦はゲーム的な面白味もあり、〈小勢をもって大敵を討つ〉特殊任務も冒険感があって目が離せない。
古代中国っぽい景色の中で大量のエキストラを使用した圧倒的な軍勢、臨場感あるカメラワークとリアルさにスピード感を組み合わせた殺陣による戦闘の迫力は健在。
俳優陣の役に馴染みきった演技も良く、映画にふさわしいスケール感で見応えある。