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キングダム 運命の炎のTSのレビュー・感想・評価

キングダム 運命の炎(2023年製作の映画)
3.6
【続編ありきで作られているのがイマイチ】76点
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監督:佐藤信介
製作国:日本
ジャンル:歴史・アクション
収録時間:129分
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 2023年劇場鑑賞30本目。
 激務の中、これは流石に公開5日以内に観ておかないとと思い昨日駆け込みました。MIも観れていないので完全に世間から乗り遅れている感じです。さて、今作を観て思ったのが、1.2作目が好調だったので予算がうんとつくがあまり、見せかけだけ豪華にしていき続編独自のオリジナリティがないのが厳しいなと思いました。まあこれは続編の興行収入が極めて良い時に起こる日本映画界の傾向なので仕方ない。確かにスケールも少しずつ拡大していっているし、キャラクターにブレがないのも良いところなのですが、全編にわたり、続編ありきで動いてしまっているのがいただけない。そんなこと言えば今公開しているMIもそうなのですが、MIに関しては、前作が終了した段階で、「これで完結かな?いや、もしかしたらあるかも」という匂わせる形で終わっているから良いのであり、そうなるとその映画単体にたいしてリスペクトがあるからセーフだと思います。誠に申し訳ないですが、今作はただただ「紫夏編」と「馬陽の戦い」を映像化しただけであり、「お前ら次はとんでもねえことになっから、とりあえずこれ観て次絶対こいよ」と言わんばかりの内容なのです。で、4作目観に行ったらまた同じようなことがおこり。。

 これはいかがなものなのか。確かにコロナにより疲弊した映画館を救済する一例としてあげてもいいかもしれないですが、ひたすら続編ありきで公開される映画も劇場に足を運ぶ者からすると少々大変。「マーベル疲れ」という言葉が出てきているように、いずれ「キングダム疲れ」という言葉が出てこないか心配ですが、まあ興行収入が右肩上がりなのですから、しばらくは続けていくでしょう。しかし、そうなると本当にいつまで続けていくのか、というのをどこかで真剣に原作者と協議していかないといけないでしょう。往年のファンならばむしろ最後まで映画化してほしいでしょう。ただ、今作が扱う箇所は原作で言うと8-13巻あたり。2023年8月1日現在、原作は69巻まででているため、本気で映像化すると、ミナミの帝王も真っ青になりそうなほどの続編タイトルが、十数年にわたり公開されることになります。そこまでついてくる鑑賞者はどれほどいるのか?「またやんのー?」となってくると、相対的に映画キングダムの価値が下がってくるのではないかと考えてしまいます。

 と、素人の自分が考えたとこで仕方ないのですが、いらぬ心配をしてしまいます。前置きが長くなりましたが、本編には敢えてあまり触れないでおきます。良くも悪くも今作は「紫夏編」と「馬陽の戦い」を2時間ちょっとでおさめた作品であり、それ以上でも以下でもない。特に真新しい技法、演出はなくせいぜい輝くのは「飛信隊」という名を初めて与えられた信の軍がたった100人で敵陣を突破していくところくらいか。ハイライトの一つである「紫夏編」の馬車での逃走シーンも、見せ方が今ひとつなのでオススメシーンにはなりえません。結局中途半端であり、これならばドラマでやればどうなの?と思えてしまいます。

 あと、もう一つこの映画シリーズに物申したいのが残虐描写についてです。言わずもがな、原作ではある程度の残虐描写が描かれているのですが、映画ではやはり国民的娯楽映画にしたいからか、そういうシーンはほぼ排除されてしまっています。興行収入や国民性などいろんな理由があると思うのですが、本気でキングダムシリーズを映画化していくのならば、そのあたりの事情を捨てて、R18などに指定して残虐描写も再現すべきだと思います。いや、自分が残虐描写が好きだから言っているわけでなくて、作品そのもののリスペクトをしてほしいですし、何よりもキングダムも「歴史」なのですから、それなりの生々しい描写を描いてもらわないとやはり本気度を感じ取れません。しかし、今作は興行収入がかなり良いので、製作陣はディフェンスに入っていくことでしょう。興行収入などを気にしなくなり、一気にそっちの路線で進めていけば、かなり好感度はあがりそうですが。。

 まとめると、面白くないことはありませんが、印象に残りにくい三作目と感じましたし、何よりもやや盛り上がるだろう続編の繋ぎの作品であると感じました。原作から大きく逸脱はしてはいけませんが、新しい技法や演出、展開を用意していかないと、興行収入こそ右肩上がりになるものの、作品自体の面白さは順調に右肩下がりになっていくのではと感じました。とは言え、邦画の中ではやはりアクションシーンはトップクラスだと思うので、キングダムのファンは一見の価値ありだと思います。
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