kuu

キングダム 運命の炎のkuuのレビュー・感想・評価

キングダム 運命の炎(2023年製作の映画)
3.9
『キングダム 運命の炎』
映倫区分 G
製作年 2023年。上映時間 129分。
原泰久の人気漫画を実写映画化した大ヒット作『キングダム』シリーズの第3作。
信役の山崎賢人、えい政役の吉沢亮、王騎役の大沢たかおら前2作からのキャストに加え、紫夏役で杏、趙の総大将・趙荘(ちょうそう)役で山本耕史、副将・馮忌(ふうき)役で片岡愛之助、副将・万極(まんごく)役で山田裕貴が新たに参加。

春秋戦国時代の中国。
天下の大将軍を志す少年・信(しん)は秦の若き国王・嬴政(えいせい)と運命的な出会いを果たし、ともに中華統一を目指すことに。
魏との戦いに勝利をおさめた彼らのもとに、秦に対して積年の恨みを抱える隣国・趙の軍隊が攻め込んでくる。
えい政は長らく戦場から離れていた伝説の大将軍・王騎(おうき)を総大将に任命。
王騎から戦いへの覚悟を問われた嬴政は、かつての恩人・紫夏(しか)との記憶を語る。
100人の兵士を率いる隊長となった信は、王騎から『飛信隊』という部隊名を授かり、別働隊として敵将を討つ任務に挑むが。。。

漫画版『キングダム』は未だに終わりが見えない。
(秦が中華統一したら終わりますが)、
キングダムの原画展で熊本日日新聞が行ったインタビューによると、原泰久さんはこのように回答によると。(2021年8月情報)
―完結までは、あとどれぐらい掛かりそうですか。
って質問に、
『願望的には、あと5年ぐらい。
年齢的にも大変なので、50歳ぐらいで終われたらと思っています。
でも、ここまでも、半分程度の期間で描けると思っていたんです。
最初の王都奪還編だけで単行本が5巻分あるんですが、当初は2巻ぐらいで描ける予定でした。
始まったら、ボリュームが増えちゃうという繰り返しで。。。』
と原泰久は答えてる。
原泰久さんの願望ではあと5年くらい(2026年頃)で終わらせたいよう。
しかし、インタビューにもあるように、合従軍戦や趙の鄴攻めといった大戦など一つ一つの話がかなり膨らんでしまうようで、まだまだ先は長そう。
勿論、それを追いかけるアニメもまだ途中。
その大河とも云える物語の濃すぎる登場人物たちが実写映画となるとどのようなキャスティングになるのか、今作品を含め三作を鑑みると非常に興味深いところです。
個人的に好きなキャラを挙げろと云われたら、かなり迷うが、俳優さんの演技を追いかけち舞うのは王騎将軍を演じた大沢たかお。
賛否両論はあるし、似てるか否か(あくまでも原作と)はこの際置いといて、とても気になる役どころかな。
本物の王騎将軍がどのような人物だったのかを説明する文献は少ない(ほぼ無いに等しい)。
主人公・信を初め登場人物は殆どが作者によってアレンジされた姿となってるが、これは秦の将軍の記録はほとんど記録が残されていないため。
『キングダム』の作者が『史記』の僅かな記述からキャラを推測して描いている。
高々、一行か二行の記述からここまでキャラを膨らます原作者はある意味、彼の空想、想像、そして、妄想は驚異かな。
そもそも王騎は実在したの?
ってとこでも、『史記』にはちゃんと王騎の名前が始皇帝の本紀に記されてはいる。
しかし、王翦や李斯のように個人の列伝が用意されていないためその彼の詳しい経歴は全くと云っていいほどわからない。
『王騎』の名前は、紀元前257年の昭襄王(しょうじょうおう、贏政の曾祖父)による趙の邯鄲包囲戦の際に初登場する(当時贏政は2歳で趙にいた)。
次に名が登場するのは荘襄王(そうじょうおう、贏政の父)の時代に韓を攻めて太原郡を設置した時。
そして父の死によって贏政が秦王となると、王騎は蒙驁(もうごう、蒙恬の祖父)・麃公(ひょうこう)と共に将軍に任じられたとある。
これは紀元前246年の事。
しかし、紀元前244年には韓を攻めて間もなく亡くなってる。
全く存在してないことはありませんが、原作者の力で息を吹き替えした『キングダム』のキャラたちの人物像は、個人的には王騎将軍を含め結構忠実に再現しているだけでなく、それぞれの俳優さん、特に王騎将軍やくの大沢たかおは肉体改造まで行っていると知り、役へのこだわりを感じます。
ポスターの上部に王騎が描かれているのは、今作品で秦と趙の戦いを率いる秦の将軍という立場にちなんだもの。
仕様とはいえ、前半の嬴政の回想シーンがやや冗長で、いつ戦闘シーンになるのかと思ったが。
回想シーンは、嬴政と闇商人子夏(杏)が秦に帰国するまでを描いたシークエンス。
秦王の約束と誓いは重いモンやし、ここは重要なことだと云いいたいのだとわかる。
わかるからこそ安易に中華統一について触れない。
しかし、チョイ長すぎたかな。
また、その話を嬴政に語るという設定は映画オリジナルのようやけど、スケール的に長さを善き思いじゃなく感じるん否めない。
別の見方をすれば、時間をかけてでも嬴政の決意を述べたかったとも云えるが。
逃げることしか頭になく、王になる気もなかった嬴政が目覚めるシーンはさすがに漫画的すぎるが、王が座っているということを視聴者に理解してもらうことを優先したからかもしれない。
今、王座に就いとる彼にも隠された過去がある。
まあ、それにしても、今作品ではワンカットしか登場しない登場人物たちの豪華さに驚かされた作品でした。
個人的には第三作目でも作品の勢いは衰えてないと感じたし、相変わらず胸アツな展開にテンションがあがりました。
前半は嬴政の悲しき過去とド派手な脱出劇、後半は平原での大軍同士の激突編と。
今作品は登場人物達の成長が実感できるのが良かった。
王の自覚と宿命を受け止める嬴政を演じる吉沢亮、軍師を目指す貂を演じる橋本環奈、猪突猛進の暴れん坊から百人隊長としてリーダーシップを身につけていく信を演じる山﨑賢人。
役柄も彼ら俳優としても、益々、応援したくなりました。
また、平原での両軍の陣営や配置を将棋のコマのよう俯瞰図で説明する演出も分かりやすく効果的で、その後の激闘がより盛り上がりがあります。
単に大軍同士のぶつかり合いだけでなく、こないな戦術を説明するのは善き。
ただ、次回へのつなぎ篇みたいな終わり方やったかなのは残念なとこ。
大沢たかおの怪演ぶりもますます油に乗ってエエ感じでした。
kuu

kuu