ニトー

ゴジラxコング 新たなる帝国のニトーのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

対でもvsでもなく、✖️。おいおい、まさかの掛け算である。GMKとかもそういう表記だった気がするのだが、しかしまあこれに関してはもう公式からのそういう楽しみ方をせよというお達しであろう。
というのは冗談ではあるのだが、もはやそういう楽しみ方をしても許される程度にはユルユル・ガバガバな映画であったことは否めない。

私事なのだが、ここ最近というかコロナ禍以降、劇場に足を運ぶ機会がとんと減っているのである。それにはいろいろな理由があるのだがモチベーションによるところが大きい。一方でもう少しコンスタントに劇場に通いたいという思いもあるにはあり、しかしいきなりヘビーな映画を観ようと思うとかえって腰が重くなるという判断から、約束されたバカ映画である本作を観るに至った。

最初のトレーラーが公開された際、「みんな~」のAAがごときコングとゴジラの全力疾走シーンを目にした瞬間に噴き出したのは自分だけではあるまい。前作、もっといえばKOMの時点でまあバカ映画ではあったわけだし、それを言ってしまえば平成VSとか昭和の諸作にしたってそういうものとして受容されていた側面はあったわけで、何を今さらと思う向きもあろうが、ここまで突き抜けてしまってくれるならと頭を空っぽにして観賞。
しかし、である。こちらの予想を超えたバカ映画でございました。

ぶっちゃけ人間パートはもうダメだ。前作で陰謀論をぶちまけてそれが真実だったというポストトゥルース以降の現実世界にお出ししては倫理的にアレではないかというのはさておくとしても、基本的にトンチンカンというかアンポンタンなマンボジャンボを繰り出すキャラばかりだし、コングに続いてモスラを登場させるためのキーの役割すらも担わされたジアさんの表情のコピペっぷりや小林幸子衣装でデデーンという登場を繰り返すあたりの安酒で酩酊してしまったかのようなクラクラっとするバカすぎる絵面など、人間パートの「怪獣バトル」の舞台をおぜん立てするためだけに取って付けたようなやり取り(地下世界に人間いるんかーい)は、そのとってつけたような美術にも表れている。なんですかあのゲーミングパレスやら傾斜80度はありそうなめちゃくちゃ高い祭壇(とそこを難なく登りきるジア)。

ていうかモスラでいいんだ。KOMで登場させたのにまたモスラでいいんだ?権利的なアレか?KOMのときは小美人みたいな設定をにおわせていたチャン・ツィイーはどこに行ったのかとか、前作とのつながりを細かく考えるのもあほらしくなってくるので、もうこの映画はこの映画で完結していると考えるのが吉。

これに比べたらギャレゴジが超真面目な映画ではありませんか。いやまあ真面目にやってはいたんだけどさ確かに。

というわけでこの映画は怪獣を観ていればいいわけだが、その怪獣の描き方にしてももはや神性はない。ほとんどモンスターハンターである。

コング(族)は、その生態からして人間のそれだし、ゴジラは犬とか猫とかもうそういう類である。気分としてはアニマルビデオを見ている感じに近く、怪獣パートのバカバカしい絵面で本気で笑いましたよ、ええ。

自分で呼び寄せておいて突っ込んできたゴジラに「ちょ、ま」なコングとか良質なコントか何かである。そこからケンカ始めるわその仲裁に入る学級委員長のモスラの「ちょっと男子~」な感じからの小林幸子ジア登場とか、エジプトのシーンは爆笑ポイント目白押しです。

事程左様にこの映画というのは全てがバカなのですが、怪獣側には愛嬌があり人間側はもはや虚無に近しいという差がある。ここまで擬人化しているのであれば、人間の部分は全部削除しちゃってもいいんじゃないかというくらいコングの擬人化が著しい。

スカーキングにゴリラ族が強制労働させられてたけどあれは何のために何を運んでるんだ?という謎もあったりするし、チビゴリラぶん回してたのにそういう役回りに収まるのかとか怪獣パートでも気になるところはあるにはあるのだけれど、徹底して怪獣の持つ神性をそぎ落とし愛くるしい動物として巨大生物を描くというのは日本では中々ないことではあると思うので、KAWAI×KAIJUという珍味を味わいたい人にはうってつけの映画である。
ポストクレジットの映像とかも特にないので観終わったらすぐに帰れますしね。
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