しの

ゴジラxコング 新たなる帝国のしののレビュー・感想・評価

3.4
もはや擬人化と言っていい怪獣プロレスバトルに振り切っていて、中途半端に人間がしゃしゃり出てた前作より全然楽しめた。それでも前半はタルいのだが、初めてこの手の映画の楽しみ方が分かったような実感はある。ここまできたらもうしょうがない。あんなに清々しいラストカット久々に見た。

冒頭、コングのアクションシークエンスで良くも悪くも鑑賞姿勢をチューニングできるようになっている。土煙を手で払う芝居付けからして擬人化が一線越えているし、緑の体液が身体にかかるVFXとか含め、もはや3DCGアニメに近いような印象を抱く。ああ今回はこのリアリティラインなんだと分かる。ここのコングはマジでインディージョーンズにしか見えない。その後のコングパートは同じ縮尺の猿しか出てこないので、もはや怪獣の巨大感を感じようもないが、この3DCG擬人化アニメ映画としてのチューニングができていたのでそこまで不満はなかった。

コングパートについては、どちらかというと無駄に長いことが辛かった。観続けるモチベーションが「他の創作物で散々見たパターンをコングでやったらこうなる」の面白さしかないからだ。のちに舎弟となる子役(?)を武器代わりにぶん回すとか、人間では絶対できないので面白かったけれども。

一方、ゴジラはコングと違い地上にいるのだからちゃんと巨大感を感じさせてほしかった。これでは差別化されない。そもそもからしてコング主役の話なのに、その間ゴジラは1時間以上出番待ちさせられるだけという、なんとも扱いに困っている感……。これなら出すところを絞ってゲストキャラにした方が良かった。

とはいえ、散々焦らしてのクライマックスは景気が良くて自分は楽しめた。今回はコングさんゴジラさん助けてくださいという話でしかないから、理由もよく分からないまま人間の都合で戦わされてる感のあった前作より見やすい。リオのプロレスなんて、もはや観戦する人間すらいない。ビーチの人々が叫ぶシーンもアリバイ的に入れているクリシェでしかなく、もはや人間サイドの被害をまともに描く気はない。なんだかんだゴジラもコングも人間の味方だし、畏怖も神聖さもない。これに怒る人がいるのは分かるが、トンマナの一貫性があるから自分は怒る気にならなかった。敵のチンケさも、ヤンキー映画文脈ならむしろ王道だし。

しかし、これでもまだまだ人間パートはかったるいと思う。どう考えても前半と後半で人間パートの比重が違いすぎるでしょう。親子のドラマとか、陰謀論者が真実を公開するか否かの話とか、世界が地下空洞の資源を狙っている話とか、結局ほぼどうでも良くなるわけで、だったら最初から不要だろう。後半は人間がサポート役・説明役に徹するだけになるので見やすくなる。何せあの「壁画読み取り」は映画史上最速ではないか。ものの数秒で歴史が全部解明されていて笑った。

斯様に、振り切り方や見せ方には改善余地があると思うが、「怪獣を使って(一応は)真面目な話としてこんなアホをやっている」ことの楽しさはあった。見たことのないシチュエーションで戦ってくれるし、この思い切りようは日本には今や難しい。いい棲み分けだと思う。

※感想ラジオ
『ゴジラ×コング 新たなる帝国』は一線を越えた!擬人化ヤンキー映画路線は正解なのか【ネタバレ感想】 https://youtu.be/9ePVxilF2jA?si=QTKBbtiWPBh4_djO
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