垂直落下式サミング

ゴジラxコング 新たなる帝国の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

5.0
ザコ狩りしてバフをかけてから強敵との戦いにむかう効率厨ゴジラさん。罪のないティアマットを殺害し、マゼンタピンクにイメチェンして、地下からの侵略者を迎え撃つ!
シリーズの最初らへんは高等な知性を感じる巨大生物だったのに、なんかコングが絡んできてから、めっちゃバカい猛獣だよな。ポータル跨ぐなよタココラとキレ散らかしてエジプトに向かっていったら、まさかのブレーンバスターをかまされ、あれよあれよとどたばた空中戦にもつれ込む。無重力戦闘に即座に適応。こんなに俊敏でしたか。さすがです。
コングのほうは悪の帝王猿との同族対決と、ミニコングとのあいだに芽生える疑似親子的な関係でドラマを魅せてゆくし、罠を張っての狩りを得意としているという地下空洞で新たに解明された生態がインテリ類人猿すぎだから、食う寝る殺すのバチクソアニマルな行動原理でやってらっしゃるゴジラさんが、余計下等な生き物にみえてきちゃいますね。コロッセオ気に入ったの超かわいかったもんな。
イジワル鞭使いハゲのスカーキングはコングと同種のやつっぽい。コングはゴリラっぽいのに、テナガザルみたいなフォルム。ダサくて強そうじゃないなぁと思ってたけど、千鳥大悟が言うところの「ほっそいヤンキーのほうがヤバい」理論を思い出して、なるほどコイツは同種の仲間にも容赦なく拳を振り下ろせるヤツだから恐れられているんだなぁと納得した。
そして、新怪獣シーモ。ムートー以来のガッツリ出てくるオリジナル敵怪獣だ。ゴジラ界では珍しい冷凍ビームをぶっぱしてくる系。氷の怪獣は、ウルトラマンでは各シリーズに一匹くらいしか出てこないし、ゴジラ界にいたっては三式機龍しかいない。インターバル抜きで冷凍光線を連発できるのだとしたら、氷雪系最強なのでは?なんかイジメられてて可哀想だったコイツに救済があり安堵。
毎度、シリーズの恒例となった首都大破壊による最終決戦の映像美は圧巻。今度は、リオデジャネイロが再建できないくらいヤバいことになっていた。四つどもえの巨大質量がぶつかり合い、波は凍てつき、鋪装は踏み割られ、ビル群が倒壊する。ハリウッドVFXチームの見事な物理演算。
髑髏島の土人(死語)の最後の生き残りとして文明社会に馴染めずにいる聾唖の少女と、未探検領域でついに同族をみつけたが手荒い歓迎を受けてしまうコング。二者の抱える孤独が鏡写しとして描写されているが、ストーリー性はよりいっそう末梢のものになっている。
ドラマを描くことを投げているのではなくて、人間ではなく怪獣たちを主軸にドラマを描こうとしているのではないかと思う。映画において、ドラマは人間の役者が担うという認識は驕りだ。モンスター・ヴァースは、ゴジラ達のドラマなのである。
歴史的快挙を成し遂げたマイナスワンの記憶も新しい状態で、ゴジラ×コングの勇姿を劇場鑑賞でき喜びもひとしお。ガキ向けオバケ映画などとバカにせずに、作り手たちが敬意をもって製作に望んでいることも、涙腺にくる。いい時代になった。
これは、もうさぁ。俺が褒めないで誰が褒めるって、そんな使命感ですよね。ファイナルウォーズ以降、シリーズそのものが氷河期に入ってしまった時期を知ってるから、放射熱線で暗雲を晴らして「まだまだ続くぜ」とやってくれるだけで嬉しいんだよな。ほんと、感謝しかないっすよ。