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ゴジラxコング 新たなる帝国のCHEBUNBUNのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

【これぞ真の「超実写化」】
動画版▽
https://www.youtube.com/watch?v=mVJHM1lBmIc

『ブレア・ウィッチ』や実写版『DEATH NOTE』を手掛け、どれも知能指数が低い大胆な原作破壊っぷりを魅せたアダム・ウィンガード。しかし、レジェンダリー・ゴジラシリーズに関しては割と上手くいっているように思える。

最新作『ゴジラ×コング 新たなる帝国』は前作以上に身体表象の映画となっていた。今回はネタバレありで語っていく。

ハイエナのような怪獣に追われるコング。崖っぷちに追いやられたかと思うと罠を発動し、やっつける。安堵も束の間、生き残ったモンスターに狙われる。そこでコングは、敵の仲間の死骸をブシュッと引き裂き、体液をかぶることで威嚇する。コングの一日は命懸けだ。死闘が終われば、滝で身体を洗う。獲物を食う。しかし、ここで歯に痛みを感じる。カメラはコングの歯にクローズアップし、「虫歯」であることが判明する。いかれたストーリーテラーことアダム・ウィンガードだけあって、まさかの「虫歯」が物語のトリガーとなるのだ。

映画はコングの下から罠を発動し、上から体液をかぶる。下から上の運動と対比させるようにゴジラのアクションを捉える。カニ型の怪獣にむかって上から下に向かって破壊光線を撃ち込み、返り血を受ける。

このことから本作は映画運動に特化した作品であることが分かる。実際に映画の大半は英語以外の架空のセリフだ。ハリウッド大作にありがちな英語至上主義に陥ることはない。少数民族とは手話やテレパシーで対話をする。怪獣は怪獣なりの得意言語でコミュニケーションを図る。そんなんで、映画の内容は理解できるのか?これができるのである。今回の宿敵「スカーキング」がコングと対峙する場面。スカした顔をしながら歩み寄り、「なんだコイツ?」「銀歯なんかつけちゃってよへへ」といった態度を取る。どう考えてもこのセリフしか浮かばないだろう一意に紐づく運動がそこにあるのである。裏を返せば、本作はサイレント映画にしても話が分かるぐらいアクションによって物語が進行するのである。そして、決して英語話者の都合に歩み寄ることはないのだ。

かつて、『ライオン・キング』のリメイクが作られた時、ハイパーリアリズムに近いタッチから「超実写化」と惹句が打たれた。しかし、実際にはリアルすぎる動物たちが英語でしゃべるので違和感があった。だが、本作は紛れもなく「超実写化」であり、まるでナショナル・ジオグラフィックスを観ているかのように怪獣たちのイキイキとした生き様を拝める作品に仕上がっていた。

もちろん、粗も少なくなく、終盤の重力反転を活用したアクションは、重量を意識させる怪獣アクションと相性が悪い気がし、なおかつローランド・エメリッヒ作品のようにごちゃごちゃ観辛い印象を受けた。

ただ、そういった欠点に目を瞑れるほど満足いく作品であった。
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