凄く面白かったのだが、暗澹たる気持ちになるし、正直「映画」として何かを語るには材料不足だし「バカ映画」とか「アホらしさ」を愛でるような物言いはしたくないので、本作は非常に厄介で面倒臭い映画。
いわゆる作中の物語は前作と同様に皆無。
ゴジラやコングをはじめとする怪獣たちの存在はデフォルトで、そうなると作中の人間たちは完全に存在意義が無効化する。
そしてコングのストーリーが主体といっても、基本的にどうでもいいのだが、本作の大きな特徴は「ショットのみで笑わせる」という不思議な新境地がある。
冒頭のコングの日常シーン。モーニング・ルーティンとも言える描写から発覚する「虫歯」。そのクローズアップで思わず笑ってしまう。
一事が万事その調子で、ただただ人間臭い怪獣たちが、体育会系、ヤンキー気質丸出しでいそいそ喧嘩に出かけるというストーリーは正直唖然。
とにかくそれ以外はショートカット気味にディテールが省かれる編集と、完全に子供向けに変質した昭和ゴジラ〜VSモノの焼き直しになった平成/ミレニアムゴジラシリーズの悪手を斜め上にアップデートしている不思議なつくり。
子供向けにはハイコンテクストで、大人向けには無内容だが、妙なおかしみは否定できない。
ただ、悪趣味なエクストリームさが際立つ分、尚且つそれなりにヒットしていることも加味して、前作以上に不安になる。
「映画」はもう「映画」であることがとにかく難しい時代に来ている「世も末」という乾燥したニヒリズムが強く感じられて言葉が出てこない。