浦切三語

ゴジラxコング 新たなる帝国の浦切三語のレビュー・感想・評価

4.0
感想【動画版】
https://youtu.be/Ve8HiwMY_Kg?si=DosC_RWti5jERsaw

北極海のティアマトさん家に押し込み強盗するゴジラ!モスラに「コラー!コング君と仲良くしなさい!💢😠💢」と叱られるゴジラ!コロッセオを寝床に(´ω` )zzZするゴジラ!調子こいてる生意気なスカーキングにお灸を据えるゴジラ!うーん良いですね!これは怪獣プロレスのシーンではないけど、体内放射で戦闘機を撃墜してくれたのはポイントでかいです!贅沢言うならゴシフェスで流れた短編映像「ゴジラvsメガロ」で見せていた「放射熱線パンチ」みたいな、もっと外連味のあるアクションがあっても良かったかも知れない。ギャレゴジや日本のゴジラにある「重量感」はまっっっったくないんですけど、災害や神としてではなく「キャラクターとしてゴジラを描く」ことに全力を尽くしているので、その振りきり方はグッドです!

しかし、個人的にはコングが良かったんだよな~!ゴジラ信者な自分でも今回のコングには胸熱でした!前作と同じく「~のどこか」キャプションで始まり、ウザイ地底世界の雑魚怪獣に絡まれて、朝シャンして飯食って、歯痛に悩まされる「おっさんコング」が、一人寂しくエレジーでも奏でるかのように失われた故郷を求めて彷徨い歩き、辿り着いたのが地底世界の未踏領域。そこでは、絶滅したと思っていた同胞たちが生きており、しかもかつてゴジラに敗れ去って地下世界に引きこもった「偽りの猿の王」こと卑怯怪獣スカーキングに奴隷として虐げられているではないか!ヤロウ!俺の仲間たちに何しやがる!とひとり戦いを挑むコング!果たして彼は地下世界に平穏をもたらすことができるのかっ!?……ってねぇ。アチいんだよね。展開が。往年の少年漫画みたいなアツさなのよ。そのアツさってのがなぜ機能しているかというと「コングの成長物語」としてちゃんと描かれているからだよ。娯楽作品としての筋を押さえつつ、しかも「怪獣コングのドラマをお客さんにわかりやすく伝えている」んだから大したものだなあと。

しかしながら、なぜコングはスカーキングに勝てたのか?それはもう言うまでもなく「コングの方が世界の広さを知っていたから」です。最初は髑髏島の世界しか知らなかったコングも、モナークなどの人間たちの世界を知り、偉大なる怪獣王ゴジラを初めとする他人ならぬ他怪獣の存在を知り、そして地下世界の存在を知る。そのことを象徴するかのように、今回のコングはポリマー製の差し歯やパワーアームなどの「人間世界に由来を持つ道具」や、DXコングアックスなどの「ゴジラ世界に由来を持つ道具」を使って敵怪獣と戦うのだ。

この世界には、自分の知らないたくさんの人や怪獣や文明があることを学ぶコングに対し、スカーキングはどうだろう。彼はゴジラに敗北して以降、あの溶岩煮えたぎる地下世界の底の底で卑屈さを拗らせ続け、孤独な王として君臨し、ポータルの存在を知るまで、ずっと広い、だが狭い地下世界に固執し続けた。唯一の他怪獣であるシーモさんに対して痛みで言うことを聞かせるその姿には、残虐さと同時に孤独感すら感じてしまう。そう、スカーキングは世界の広さを知ろうとしなかったが故に、いつの間にか真に理解しあえる仲間もいなくなり、気がつけば自分の周りには、力で言うことを聞かせるしかない大猿や怪獣しか残っていなかった。これってめちゃくちゃ良いメッセージだなあと思うんですよ。すごい子供の成長に良い教材として使える映画だよ。「世界の広さを知ること。そこから学ぶことで、怪獣も人間も成長できるのだ」と伝えつつ、さらにこの映画は黒人の怪獣オタクの目線を通じて「知識というものは、自己承認欲求を満たすためや他人へのマウントに使うために獲得するものではない」ということさえ伝えてくる。結構マジメなこと言ってるんですよね。

「漢コング/🪓ひとり旅」に涙して、小物感漂うスカーキングにムカついて、解像度の低い大猿強制労働描写や、めっちゃ階段が急なモスラ祭壇には爆笑!リボンフリフリ謎イメージな古代部族との交流、などなど見どころ盛り沢山でやべぇ!好きだこれ!

ま、でも映像がところどころゲームチックだったり、地下世界の遺跡の入り口が、もろにHorizon Zero Dawnだったり、あとは湖でシーサーペント相手にした次の場面で、同じシーサーペント型のティアマト戦を出してきたり、怪獣の見せ方はもうちょい工夫してほしいと思いましたが、それでも満足しました。良い映画です。
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