複数の落語を下敷きにした歌舞伎の舞台を映画風に撮影して映画館で上映する手法。作・演出は宮藤官九郎。中村獅童ら役者も楽しげに演じていた。こういう形式のは初めて見たが、とっても面白かった。
映画というか舞台は、人情噺の「唐茄子屋政談」を主体に進む。その間に、滑稽噺の「鈴振り」や滑稽な人情噺「大工調べ」も挟まって展開し、この3つの噺がうまくかみ合って面白さを増している。落語好きにはたまらない。落語を知らなくても、十分楽しめると思う。
コロナ禍での上演(R4年)でもあり、観客や「その他大勢」の演者たちはほとんどがマスク姿。荒川良々らのセリフには、随所に「自粛なんかや~よ」等、時事的な(今や懐かしさすら感じるが)話も混じって、面白いつくりになっていた。
あえて難をいえば、上出来の劇場中継を見ている感はある。つまり、実際に見たら、もっと臨場感があっただろうなあ、というない物ねだりのぜいたくな感想。
本作みたいに、日本の伝統芸能を今風に編集し直した作品は貴重。原作の落語がよくできているのが第一条件だが、それ並みかそれ以上に、工夫を凝らした演出と脚本があってこそ、見る者を引き込む。こういうのをまた見たい。