耶馬英彦

シンデレラ/3つの願いの耶馬英彦のレビュー・感想・評価

シンデレラ/3つの願い(2021年製作の映画)
3.5
 グリム童話で有名な「灰かぶりのエラ」=「シンデレラ」の新解釈だという触れ込みだったので、まったく想像はつかないものの、それはもう振り切ったシーンが見られるのかと漠然と期待していた。
 振り切ったシーンはなかったが、冒頭の墓参りのシーンが中盤の木の実が弾けるシーンに繋がって、再び墓参りのシーンに戻るという極めてほのぼのとしたストーリーに、ちょっとほっこりした。

 人間の欲深さと残忍さがテーマのグリム童話と違って、本作品のテーマは親の愛である。シンデレラの亡くなった両親の愛、女主人の愛、それに王様夫婦の愛だ。ディズニーも赤面しそうな場面を大人たちが大真面目に演じているところがいい。流石に幸福度が高いノルウェー映画である。日本では子供騙しと評価されそうな作品を、臆せず堂々と製作する。

 戦争、殺人事件、政治家の棄民。世界はおどろおどろしい悪意でいっぱいだ。たまにはこういう善意に満ちた作品もいいものである。
耶馬英彦

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