なだ

ペーパーシティ 東京大空襲の記憶のなだのレビュー・感想・評価

5.0
もうすぐ東京大空襲から78年
年々意識しなくなるこの日を思い出させる映画を観ました。

昭和20年3月10日
アキバヤスコ17才
小さな弟を背中におぶい
後に東京大空襲と呼ばれる米軍による空襲の中逃げる。

上記の人物は私の母
母から聞かされた空襲の話は後に書きますが、先ずは東京大空襲に興味を持ってこの作品を制作してくれたエイドリアン・フランシス監督に感謝したい。

空襲から78年になる
当時を知る人も高齢化で存命の方も数少ない。
記憶のブラックボックスをドキュメンタリー映画で残してくれた。

冒頭、日本を攻撃する士気を高める英語の歌が流れる。
軽快なメロディと心ない歌詞に攻撃された側の人間としてショックを受ける。

作品は、存命している方の空襲の体験談や太平洋戦争末期に名古屋、大阪など各都市を襲った空襲を被害として国に提訴している事(安倍政権時代)。亡くなった方の名簿を残す活動などに密着している。

火の海の中、隅田川に潜って生き延びた少女。
川に浮かぶ死体を回収させられた少年。
初めて聴く地獄絵図を体験した方の話は心に重く感じる。

一夜で10万人の命を奪った空襲は軍事施設など無い土地の民間人を襲う暴挙でした。

戦後GHQの政策で日本人が米国に恨みを持たないよう教育されたのは知っているけれど、今の日本人はキレイさっぱり忘れ過ぎてはいないだろうか?
忘れているウチに我々の納めた税金が軍事費にまわってしまう。

今更米国を恨んでも前に進めないけれど、歴史的事実はしっかりと知識として残して、鎮魂の気持ちを忘れないようにしたい。



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下記は空襲から助かった母のメモリー。映画とは関係無いのでスルーしてくださっても良いです。

母が『渡ろうとした橋は逃げる人に止められて渡らなかった。渡っていたら火の海にまかれて死んでいた』(橋の名前は分からず)とよく話してくれた。もし渡っていたら私は産まれていなかっただろう…といつも考える。

『防空頭巾なんか役に立たない、火の粉がかかると綿だからチリチリっと中に入って燃える』と弟の頭に被せた頭巾の話もよく聞いた。

空から落とされる焼夷弾は花火が上がる音に似ていて、キレイだったと語る母。

タイトルの「ペーパーシティ」は木と紙で出来た都市は燃えやすい=大災害(それも人災)をイメージしたのでしょう。

母は浅草生まれの浅草育ち。本当に「ひ」を「し」と言ってしまう江戸っ子でした。
浅草寺をセンソウジと言うと「観音様って言うのよ」と直され、御神輿を担ぐ時のソイヤッて掛け声は浅草の言い方ではない。浅草は「わっしょい」だと譲らず。地元愛に溢れた頑固な一面を持った人でした。

今年で10回忌
強情っぱりでよく喧嘩もしたけど未だに母の教えは役に立っています。

スコアは被災された方々を偲び満点です。
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