塔の上のカバンツェル

Desert One 大使館人質救出作戦の塔の上のカバンツェルのレビュー・感想・評価

3.8
有名な1980年のテヘラン駐アメリカ大使館員救出作戦を扱ったドキュメンタリー。
米軍の総力を上げて実施したイーグル・クロー作戦の第一段階の終結地点、"デザートワン"が本作のタイトルになっています。

アメリカ大使館員人質事件が発生するまでのイランの歴史や、事件発生から作戦失敗までの、米大使館員、イランの革命家や現地イラン人、作戦に関わった米軍人、カーター大統領と、三者三様の視点であの顛末を追っていく。

1時間半という尺の中で、作戦の細部や失敗の要因などは深掘りせずに、あくまでも当事者たちの苦悩や当時の体験、そして遺された者たちが何を想うか、という人間の内面に重きを置いた作品になっています。

その意味で史実の新発見などの歴史ドキュメンタリーの面白さは控えめであるものの、個々人の憎悪やトラウマを浮き彫りにしあの事件を再確認するには、とてもバランスが良い作品だとも思いました。


本作戦の失敗を経て、アメリカの特殊作戦軍の創立や統合任務部隊の運用思想がより一層盛んになった点や、アメリカ特殊部隊の父ベッグウィズの当時の肉声や憔悴した彼の心情など思うところもあり。

一方のイラン側は本事件をナショナリスティックな場所として今も記憶に留めているわけだけど、1980年から開戦するイラク・イラン戦争の激動やコントラ事件などの米・イラン間の複雑かつ緊張をはらんだ関係がその後も続いていく現実を理解する上で本作はその手掛かりになるような作品になっていると思います。