故ラチェットスタンク

劇場版 SPY×FAMILY CODE: Whiteの故ラチェットスタンクのレビュー・感想・評価

劇場版 SPY×FAMILY CODE: White(2023年製作の映画)
3.4
『Mission Impossible:Family Protocol』

友人と野次馬的に観に行って思ったより良く出来た作りで普通に感動してしまった。Clover Works×WIT STUDIOの力量がちょうど良く発揮されていて適度な見所アリ、適度な脱力感アリで楽しめてしまった。

(トイレの神様のくだりなど所々しょうもなさすぎてどうかと思ったが)絵的な飛躍が意外とあり、劇場で見せてもらえて嬉しかった。廊下であの3人がもつれながら追い合うシーンのデフォルメ感や武器人間と戦うシーケンスの室内の立体感表現など「ここ!」と決めた力点の置き方が上手だ。

スパイ×アサシン×サイキック、という3人の政治的なポジションのおかげで「家族みんなで」という話の軸も意外とサスペンスを持って駆動しているし、チョコ→メレメレ→チェリーのお酒→アーニャ救出、とプロットデバイスを取っ替え引っ替えしての進行も飽きが来ない。何より全場面、アーニャの健気さ、ロイドの生真面目さ、ヨルの頓珍漢さのアンサンブルが小気味良く作用している。

ヨルの話だけやや乖離して浮き気味なのは難しいところだなと思うが、元からずっとそんな感じだったので「今回も大変そうだな」と思うなど。ギャグも諸々「あーやってるなあ」となるお馴染みの「お可愛さ」だが、声優陣の器用さでケタケタ笑えるので楽しい。お酒でヨルがグデングデンになるくだりや観覧車のくだりのアーニャの絶望したつぶやきなど、演技での見せ場がある。種崎敦美さんは同時期放送の『葬送のフリーレン』でフリーレンを演じられていたが、全く違う演技トーン、声域で超ビックリ。

総じて、全く気になっていなかったが全体の手堅さに感心してしまった。『デッドレコニング』より面白かった。