さわだにわか

インフィニティ・プールのさわだにわかのレビュー・感想・評価

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
3.8
たぶんフィルマークスでは評価低いんだろうなと思って応援目的でBlueskyに書いたポストを転載しようとしたら普通にみんな評価してくれてたのであんま意味なかった。でもせっかくだから載せとこう。


あえて対比的に言えば、デヴィッド・クローネンバーグは精神の状態(欲望)が肉体を変化させる、という映画を撮り続けてきたのだが、ブランドン・クローネンバーグの関心は逆であって、環境や肉体の変化がどのように人間の精神を変形させていくか、という点にある。『インフィニティ・プール』がドラッギーな視覚効果を多用する一方でクローンがどうののSF設定はこれといった展開を生まないのは脚本の難点ではなく、そもそもこの映画で焦点が当てられているのは、そうした状況下での主人公の精神の変質過程だということなのだ。要するにこれはクローンがカジュアルに可能になったときに、人間の脳みそはどのように壊れていくかを考えた映画なわけである。


……というわけでそういうブツが好物の俺にはたいへんよい映画だった。これがよくわからん、おもしろくないという人は、SF作家J・G・バラードの『結晶世界』とか読めばきっとブランドンが何をやりたかったかわかる(おもしろくなるかは不明)。父クローネンバーグはバラードの実写化映画でも有名だが、俺はブランドンの方がずっとバラードの世界観を深く理解していると思っていて、この映画『インフィニティ・プール』もなんだかバラード原作としか思えない映画なのだ。それはそれでどうなのかと思うが
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