りゅう

インフィニティ・プールのりゅうのレビュー・感想・評価

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
3.5
近年では、ホラー映画には美しい風景が使われるものが多くなってきているような。

本作は「ミッドサマー」のように、明るい土地が舞台である。
南国のリゾート地で起こる奇妙な物語である。
綺麗なリゾート地の反面、郊外に出ると工場のグロテスクなパイプが這い回る様子が道から見える。まるで島という生き物の、血管のようである。

自分が罪をおこし死刑になった際は、自分のクローン(遺伝子情報だけでなく、記憶も持ち合わせている。そのため、コピーと言って良い)を作り、それに肩代わりしてもらう。
内容だけでみると、藤子不二雄の不条理SFでやっていそうな気はする。

本作の「自分のクローンに死刑を肩代わりしてもらうのが当たり前になっている金持ち」は、異様で気持ち悪い。
命の価値、モラルなどが崩壊しているのである。

◯アス
ジョーダン・ピール「アス」。
これは地下世界に自分の分身のような存在がいるという設定である。
豊かな生活ををしている私達、しかしものすごい些細なことの積み重ねで、もしかしたら悲惨な暮らしを送っていたかもしれない。
(不幸な暮らしの)彼らと、私達(アス)とは、紙一重である。一体何が違うのだろうか、という映画である。

アスで襲ってくるのは自分とそっくりな存在である。
「もう一つの人生の可能性。不幸になったバージョンの自分」が、裕福な自分を襲ってくる。

本作もテーマとしてはそれに近いことが描かれる。
死刑になった自分のコピーと、その元ネタの自分。果たして、命をそのように弄んでよいのだろうか。

◯マスク
マスクのデザインは「武器人間」のリチャード・ラーフォースト。
素晴らしいデザインだった。
伊藤潤二らしさもある。
りゅう

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