ミミクリンクス

インフィニティ・プールのミミクリンクスのネタバレレビュー・内容・結末

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

夜と海、それらに感じる、途方もなく大きいものに呑まれそうになる恐怖・愉悦。まさかミア・ゴスがここに並ぶ存在になるとは思わなかった...本作のテーマがわからない私でも、彼女の抑えがたい魅力だけは肌で感じた。

この物語が、「蛹」に関する映画であるということは何となく理解できる。幼虫みたいなマインド(そんな言い回しある?笑)のジェームズがミア・ゴスと出会うことで、来るべき日(雨季、巣立ちの時期)に向けて長い蛹となる。蛹の中では体がグロテスクに変容し続けていて、成虫になると今までとは姿形が全く変わってしまう。繭の中で眠りが起きているならば、自己連続性は途端に崩れ、羽化した後の自分は果たして自分なのかはわからなくなってしまう。眼がチカチカするトランス状態の映像、何より彼らが被る変身途中のようなマスクは、蛹内の崩壊したイメージを表していると考えられる。監督の映画は初めてだが、さすがはボディの父、マインドの息子といった感じか。

ここまではわかる...!だけどラスト、果たしてジェームズは成虫となったのだろうか?隷属した犬となった自分を殺すことで、再び主体性を取り戻したかに見える主人公。しかし、あろうことか母の乳を吸い始める。これは「生まれなおし」なのか「羽化失敗」なのか...ケロリとした顔で成虫の社会に戻るゴス達を尻目に、一人豪雨のホテルに留まる彼は、むしろ成虫となるのを拒否したのかもしれない。