椎良

インフィニティ・プールの椎良のレビュー・感想・評価

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
3.7
煮え滾る赤

〈小説家ジェームズは妻とともにリ・トルカ島を訪れる。執筆がスランプ中である故にインスピレーションを得ようとしていたのだ。
しかし、彼は意図せず人を車で轢き殺してしまった。死刑と共に告げられる、一つの異常な制度とは〉

ブランドン・クローネンバーグ監督最新作。前作同様 R18+指定を獲得。
バカンス中の高揚感でハメを外しちゃうってあるあるですよね。やり過ぎると部活仲間と障子を破り放題みたいなことにも……今作は倫理の外までハメを外しちゃう人々の話。

生まれ変わりの幻覚。自身が肉体として曖昧になっていく危うさを、露骨なグロや完全アウトな描写の数々も交え刺激的に描く。一線を超えては後退りし、揺れ動く境界…過去作と共通するテーマ・ジャンルにアプローチを変えて挑戦していると見える。
回転するカメラワークと、中盤の集団処刑への流れが最高。ミア・ゴスの冷血狂いっぷりがまたもや発揮。

ジェームズの心象描写が中心で、思ったよりはっちゃけてはいなかった印象。また彼の態度が曖昧であることは今作のポイントであるものの、ストーリーの推進力として弱い気がした。オリジナルの行方など最後までスッキリさせない展開には、唆られる部分もある。

割り切れる自分と割り切れない自分がせめぎ合う。
描きたい設定と一貫した信念が強く出た一作であり、これからも精力的にSFノワールを送り出して欲しい監督だと思う。
椎良

椎良