茶碗むしと世界地図

インフィニティ・プールの茶碗むしと世界地図のネタバレレビュー・内容・結末

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 ブランドン・クローネンバーグの長編3作目となるSFスリラーである。

 プロットはフィリップ・K・ディックっぽい感じでアイデンティティが揺らぐ様子を描くのかと思いきや、なんか全体的には『ミッドサマー』みたいなお話になっている。退屈な感覚のある男が残酷で不気味な状況に適応しつつ追い込まれ、自分殺しをすることで精神の解放を得る……という、まあわりとそのまんまの構造だ。『ミッドサマー』は宗教だが、この『インフィニティ・プール』はSFのモチーフで同じテーマを扱っていると言えるし(ドラッグとセックスという共通点はある)、若い作家がそういうものを描くというのはやはり最近の流行りなのだろうか。

 面白いところはいろいろあるが、ジェームズ(アレクサンダー・スカルスガルド)がとても魅力的である。アレクサンダー・スカルスガルドは身長が2メートル近くあってガタイもいいので、画面の中で傍若無人にふるまったり、暴れたりすると大変怖い。おそらくこのへんのキャスティングと内容で白人富裕層を皮肉っているところもあるのではと思う(あとオーバーツーリズムの問題も扱っているようところも見受けられる気がする)。一方で、ガビ(ミア・ゴス)がファム・ファタルとしてはあまりにも古典的すぎてちょっとなぁ……と思ってしまった。ミアの存在感はすごいし、演技力も素晴らしいのだが、面白みに欠ける気がした。また、ミアは最近、撮影現場でエキストラの男優の頭部を故意を蹴り飛ばしたとして民事訴訟を起こされており、現在は疑惑にとどまってはいるものの、ガビがジェームズを追い込む姿を見るのはそれを思わせてちょっと居心地が悪かった。