てっちゃん

インフィニティ・プールのてっちゃんのレビュー・感想・評価

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
4.2
お久しぶりの映画館どっぷりデー。
これはこれでやっぱり好きな時間でもあるし、最近の充実した時間があるからこそ、また特別なものに感じますね。
さあ映画館どっぷりと楽しむぞ!!

金曜のレイトショー、やや古い地方シネコン、、治安悪いな、、
異様に多い若い人たちと地方ヤンキー、家族ずれが多数。
何故だ?と思っていると、コナン!ハイキュー!のポスターが!
そういうことか!と思い、発券だけ済まして、先行でパンフ買っておくかと思うと、グッズ売り場は異様に長い行列と熱気。
これは並べんわ、、と思って、実は楽しみにしていたショッピングモールのごはん処へ。

ごはんを済ませて、グッズ売り場へ行くと少し落ち着いてたので、すかさず「パンフ下さい」。
そんな地方シネコンでも好きものがそれなりにいるようで10名くらいで本作鑑賞開始です。

実はものすごく楽しみにしていました。
ブランドン•クローネンバーグさん。
本作で完全に父親と分けて語るべき方になったと思います。
それくらいに本作ではのびのびとしているように感じました。

いろいろと書いていきたいので、思ったことを乱雑に書き殴っていきます。

•無機質、清潔さがブランドン印
これがあるから違和感が生まれるし、謎のセンスの良さも生まれるし、どこか現実離れしているのが感じられます。

それと対比して、警察署?を並べることにより、よりその格差が確認できますよね。
しかも父と同じく、メカニック造形がすごい好み。

例のクローンを作るあの設備といい空間といい最高ですよね。
あとはATM?のあの感じ。
かっこよくもありつつ、少し使いづらさを感じつつも、唯一無二なんですよね。

・ミア・ゴス様
これは触れずにはいられないですよね。
とにかくミア・ゴスさんがすごいのなんの!!
以前にお会いしているようですが、過去の出演作を思い出してもミア・ゴスさんを思い出せないという相変わらずの記憶力の無さに驚愕しますね。

そんなことはどうでもよくて、とにかくものすごい魅力的な役者さんですよね。
顔芸は言うまでもないですが、今回は”表現”がすごい。

ミステリアス~エロい~ハイ~狂気~母~、、数々の感情を演じ、そこにはミア・ゴス力があるんです。
こんな表情もあるのね、、とうっとりしていたら、次にはブチギレ!!とか最高すぎるよ。
しかもあの声の使い分けもすごいよね、大好きな役者さんです。

パンフに件のバス追っかけシーンに入る前のミア・ゴスさんの様子が書かれていて、すげえな!となるので必読です!

・ブランドン・クローネンバーグさん、確立ですね!
先程も書いたけど、本作で完全にブランドン・クローネンバーグさんという監督自身が評価されるべき監督になったと思います。

否応なしに父親を引き合いに出されていたわけであり、意地悪な言い方だけどその恩恵も受けてきたのも事実かと思います。

本作でも、ブランドンさん自身の言葉と思わしきシーンが出てきます(七光りみたいなこと、批評家からボロカスに言われたことなど)。
その言葉は、映画業界に対するアンチテーゼすら窺えます。

本作では、トリップシーンで実験的な映像の作りこみがすごいですね。
いろんなことを試しては、楽しみながら製作したのかなって感じが伝わってきました。
しかもそれらが、作品と非常に合っているところが素晴らしいです。

・作品アイディアが好み
高級リゾート地に来るのは西欧のセレブ達。
リゾートの外に出たら貧困の世界が広がっており、そのセレブ達は現地で好き放題のやりたい放題。

なにせ”お金”があるから。だから何をやっても”お金”で解決できます。

本作の例を出すと、現地で殺人を犯して死刑になったとしても、この国は極端な法治国家であり人治国家かと思われるので、”お金”を払えばなんとでもなるんです(かなりの大金のようですが)。

だがしかし、そのなんとでもなる方法が、自分に瓜二つのクローンを作製し、そのクローンを処刑するのです。しかも処刑するのは被害者の遺族。

興味深いのは、そのクローンには基になるオリジナルの記憶が引き継がれるのです。
つまりは、本人の記憶力があるクローンとオリジナルとの境目はどこなんでしょうね?となるんですよね。

アイデンティティとはなんぞや?に切り込んでいく作品かと思ったら、本作はそことは違う物語へと進んでいくのです(もちろん考察できるようにあらゆる仕掛けはありますが)。

私はブランドンさんって、自分の想像力をアートとして表現する手法で映画を製作しているように感じました。
ブランドンさん本人も”人間の内面心情の変化を描くことに興味がある”と言っています。
なので、そのあたりも気にして観ると、またいいのかもしれません。

・人格とはなんなのか
本作に出てくるセレブ達はオリジナルなのか?はたまたクローンなのか?

クローンだとしても、オリジナルの記憶もある"本人"ではあるわけで、だとしたら自分とはなんなのか?というお話になってきますよね。
本作に出てくる人たちは、モラルが崩壊しています。

お金を払っているからいいじゃないか?と言われるかもしれないが、モラルがありません。
つまりは人間としての尊厳を自らが捨てているのです。

人格とはなんなのか。
今の自分は本当の自分なのだろうか。
でもお金を持っていたとしたら、自分はどのような行動をとるのだろうか?
本作登場人物たちのようになってしますのでしょうか。

えらい長文になってしまいました、、長文になるということは私好みの作品であったということでもあります。
大変いつも楽しみにしている映画Youtubeチャンネル”BLACKHOLE”でも本作を取り上げており、うんうんと頷きながら聞いていたら、ブランドンさん本人へのインタビューもあって非常に楽しかったです(柳下さんも語っていたが、喋り方なり内容がお父さんにそっくりだったのは笑えた)。

パンフは表紙からは想像できないくらいに凝った作りをしています。
本作の緻密な設定が記されており(例えば本作で出ている言語文字は本作のために一から作ったものだとか!)、読み応え抜群です。

特にデスマスク?の製作者さんのインタビューがとても面白いし、彼の映像作品も観たくなりましたね。
本作に登場する黒塗りカーの組立図もあるのも最高でしたね。

そんなこんなで次作も非常に楽しみな監督さんでいて、これからも面白おかしい作品を期待しております!っという感じでした。
てっちゃん

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