幽斎

デス NS/インフルエンサー監禁事件の幽斎のレビュー・感想・評価

3.8
フォロワー46万を超える女性インフルエンサーを拉致監禁。謎のマスク男はライブ配信で1時間以内1000いいねの獲得を強要するソリッドシチュエーション・スリラー。京都のミニシアター、みなみ館で鑑賞。

私のレビューはシネコン枠、ミニシアター枠、スカベンジャー枠(アマプラ謎映画)、本来は本作はスカベンジャーだが、劇場で予告編を何度も見せられたのでしっかりレビューしたい。アメリカで全くウケなかった超低予算映画で全国ロードショーを敢行した TOCANA映像事業部のエクストリーム、作品よりアンタの方がエクストリーム(笑)。

予告編が私の生涯一位作品「SAW」名指しで「ソレを超えた傑作!」言い切るのもエクストリーム。実態はJamie Bailey監督、脚本、撮影、編集の自主製作で長編3作目。デビュー作はパッとしないが前作「This Was America」アメリカ政府を批判した作品で主演女優が受賞、監督はカナダ人だが「クローネンバーグに続くカナダの新鋭」は言い過ぎ+煽りが過ぎる。エクストリームはレビュー済「シークレット・マツシタ/怨霊屋敷」輸入して全国に垂れ流す、ホラー・ファンは要注目。
www.youtube.com/watch?v=EUxPS2HpTts

原題「De influencer」de、接続詞を語頭に使うと言う事は、否定から始まる肯定文で「インフルエンサーを排除」カナダ英語らしい遠回しタイトル。レビュー済「スプリー」「#フォロー・ミー」バズりたい奴が自業自得、プロットの好守の入れ替えも「ワナオトコ」続く「パーフェクト・トラップ」既に前例アリ。インフルエンサーも元は経済用語、SNSを利用したマーケティングから言葉が独り歩きして世間に影響を与える人物を指す。

スリラーの基本でプロットの好守を入れ替えた作品は概ね面白くない、定番を逸脱して乗り越えるのはほゞ無理。ミステリーに置き換えると第一発見者が「実は犯人でした」を傑作に導くのはとても難しい。歌舞伎や宝塚が毎年同じ様な事をヤッても面白いのは理由と訳が有る。主人公は完全被害者、ソレではツイストが足らないと気付いたか、在る作品のテーマを模倣する。

ソレが「SAW」ジグソウだから頭痛が痛い。作品が水道の蛇口の様に捻らないのでネタバレで進行するが、いいわね、忠告したわよ(笑)。本作はマサカの「説教系」日本のジャケ写はカナダ版と寸分違わぬデザイン、ソコから連想する方向性から完全に逸脱、原題通りインフルエンサーを徹底的に否定。邦題「デスNS」文字面を見るだけでは分らないが、貴方も声に出して読むとホラね?エクストリームって会社、実に面白い。

「SAW」の凄さを再認識したが、偉大さの根源はプロットでは無く演出力。観客に先読みを許さない事だけに集中すると物語は確実に面白くない。如何に観客を飽きさせず且つ伏線はしっかり提示して且つ見てる間はドキドキハラハラを忘れず且つ結末に全員が納得する、無理難題を精巧させるのは神業に等しい。監督はネットの友人は誰も信用ならず虚構の信頼なんて砂上の楼閣、とでも言いたいのだろう。レトリックが陳腐なら90分を埋めるのは会話劇だが、ソコも退屈極まりなく何処がソリッド・シチュエーションなのか監督を小一時間問い詰めたい。スリラー初心者でも犯人が本気で殺すつもりが無い事は簡単に看破出来てしまう。グロを期待しても「血」はコップ一杯しか出ない。例えば傷口を下にして寝る、観客はソウ言う不自然な点を見逃さない。

【ネタバレ②】せっかく劇場で観たので、いいわね、いくわよ(笑)【閲覧注意!】

何処までが虚構で、ドコまでが本気なのか?。しっかり観なくても「全て犯人の自作自演」が正解。ギミックも全て犯人の仕込んだ演出、「いいね」カウントも創作の範疇。投稿も実際は配信されてない。「999」シャットダウンもテレビ番組の様で興醒め、そもそも論で46万のフォロワーが居るのに、自撮り写真が1時間で999は普通にマズいと思うが、各言う私もSNSには無関心で連絡ツールも昔ながらのメッセージ。「いいね」数が少ない事に驚かない理由も、フォロワーも仕込んだ自作自演だと解る。「SAW」には遠く及ばないが、チャンと本作がスリラーしてる事は伺える。

SAWのジグソウは命の大切さを説いたが、本作の犯人は仮想のSNSではなく、現実を見ろ!と。承認欲求は自分のアイデンティティを満たす行為だが、所詮は虚構に過ぎず、イザと言う時に頼れるのはリアルな家族や友人。Filmarksも架空の人物を語るのは可能で、私の様に居住地まで晒してる人は少数派だろう。Facebookは自分の自慢話、X(Twitter)も同じ様なモノで本人が認められる事は無く、社会の価値観に引き摺られ、結果的に歪んだ方向へ流されるのがオチ。私は一方的にインフルエンサーが悪だとは思わない、しかし、ステルス・マーケティングの誹りも免れないと思う。

犯人の言い分もEgoistソノもの。COVIDが猛威を振るった時の「マスク警察」と何ら変わらない、一方的に正義を振り翳す非常識。監督はインフルエンサーもエゴイストも同じメカニズムで滑稽ですと、説教臭いテーマを精一杯今風に見せたに過ぎず、ホラーとして面白くないので、学校のホームルームで流せば生徒の教訓には為る?(笑)。

貴方に〇来レースな〇番劇を楽しむ度量が有るか試される、意外と大真面目なスリラー。
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