法月

ひとくず 新ディレクターズカットの法月のレビュー・感想・評価

4.0
いわゆるインディーズ映画。
知ってる俳優さん出てこない(唯一、運送会社の社長役、田中要次さんだけは知ってた)。
低予算なのはまるわかり。けど、ハリウッド超大作にも負けない感動がある。最後にはボロ泣きだったよ。

脚本・監督・主演、上西雄大。
聞いたことない観たことない。
けど、忘れないよこれ観た後は。この顔、この声...


ひとくず。
主人公はまさにクズ。だって職業空き巣だもん。物心ついた時から空き巣やって、娑婆と刑務所行ったり来たりして生きてきた人間。
それしか生きてく道がなかった人間。
そんなクズが押し入ったアパート。
電気もガスも止められた部屋にひとり閉じ込められていた少女、マリ。
ネグレクト。虐待。精神的なだけじゃなく、肉体的虐待も...
手の甲には煙草を押し付けられた痕、胸にはアイロンを押し付けられた痕。もう見るに堪えない。酷い、酷い...
空き巣のひとくず、そんな少女を見て思わず世話をやいてしまう。
なぜなら、ひとくずも悲惨な虐待を受け続けてきた子供だったから。

映画観てる間、もう他人事とは思えなくて、ひとくずカネマサと供にマリの心配して、マリの笑顔に心が和んで、マリの泣き声に心を抉られた。
これが映画の力よ。

ラストは思いっきりベタな展開。
けど、これでいい。いや、これがいいのよ。


たとえばさ、名のある監督が撮り、名優役所広司が主演した「すばらしき世界」。人生の大半を刑務所で過ごした男の話。
立派な映画だよ。レベル高いよ。
けどさ、観てるこっちからしたら「あ、名優役所広司が前科者の役熱演してる、凄いな」としか思えないのよ。
自分には、ひとくずカネマサのほうがよっぽど心揺さぶられたのよ。
だって、画面に映ってるこいつ、くずのカネマサそのものとしか思えないんだもん。映画って不思議だね。

優れた映画かどうかはわからん、判断つかん。
けど、大好き。
出会えてよかった。
偶然に感謝。

「アイス食やぁ辛い事忘れられるんだよ...だから食え。俺は食わないけどな」

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