えるどら

岸辺露伴 ルーヴルへ行くのえるどらのレビュー・感想・評価

岸辺露伴 ルーヴルへ行く(2023年製作の映画)
3.8
5/27 舞台挨拶中継付で鑑賞

原作未読のため、勝手に「先生がルーヴル行って謎に巻き込まれる感じだろう」と高を括っていた。
岸部露伴の過去、自身のルーツ、そしてそれ故にルーヴルへ行かなくてはいけないという理由付けまでしっかり絡んでくるとは驚いた。
「まさか、この岸部露伴がパリに観光しに行くというただそれだけのコンテンツだと思っていたんじゃあないだろうな」と怒られたような気がした。
最終的に、ルーヴルそのものが大きな怪異、もしくは人の手に負えない不可侵領域のように見えてくる。
岸部露伴とルーヴル美術館を掛け合わせる、という意味を実感した。

ところで「黒」を映像で魅せるとき、映画館で鑑賞するのが最も適しているのではないか、と鑑賞中そんなことを考えた。
スマホでは画素数が難しく、モニターでは黒は反射して鏡になる。
大画面、スクリーン、暗がり、という映画館の条件が現代で黒色の映像を最も美しく魅せることができる環境だと思っていた。

「この世で最も黒い絵」というこの作品の最も重要なワードが映えるよう、衣装・照明・画角・演技・音楽など細かな部分にまで配慮されていたように見えた。
なかでも木村文乃さんのキャラは格別だ。
この作品のキーキャラに相応しい存在を放つ。
突き抜けた黒。

キャラでいうと、長尾くんの青年期露伴も良かった。
顔はそんなに似てないけど、シルエットが露伴っぽくてかなり良かった。
あとは頬のえくぼ?凹み?も。

映画全体がしっかり締まっており、劇場まで見にいって良かったなと思えた。
漫画原作ドラマ化でその劇場版、というおよそ邦画シーンでは地雷臭しかしないはずのフレーズなのにこんなにも素晴らしい。
その秘訣は露(ほんのわずかなこと)に伴(寄り添っていく)するその姿勢なのではないだろうか。
細部まで丁寧に、作品にリアリティを。
制作スタッフが「露伴先生に顔向けできないような作品は作れない」と思っているんじゃないだろうか。

現代邦画でもかなり良い作品ひとつ。
TVドラマ『岸部露伴は動かない』シリーズを視聴した方はぜひ劇場に足を運んでいただきたい1本だ。
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