ジェイコブ

岸辺露伴 ルーヴルへ行くのジェイコブのネタバレレビュー・内容・結末

岸辺露伴 ルーヴルへ行く(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

人の歩んできた軌跡や記憶、考えの全てを本として読むことのできる能力「ヘブンズ・ドアー」を持つ人気漫画家岸辺露伴。取材や作品の細部に至るまで徹底したこだわりを持つ彼は、自身の過去に、ターニングポイントとなった女性奈々瀬から教えられた「黒い絵」を探すため、担当編集の泉京香と共にパリのルーブル美術館を訪れる。現地ガイドのエマの協力を得て、絵が地下倉庫にあることを突き止め足を踏み入れた露伴だったが、人が決して触れてはならない「禁忌」の存在を知ることとなる……。
NHKで放送した連続ドラマの映画。原作は熱狂的ファンを数多く持つ荒木飛呂彦の「ジョジョの奇妙な冒険」。
岸辺露伴を演じるのは人気俳優の高橋一生。ドラマ版に引き続き、演じる際には原作のイメージを壊さないことを意識していたとのことだが、スタッフ共々その意識は共通認識として持っていたとのこと。原作を意識しすぎるがあまり「コスプレ」映画となってしまった邦画が数多くある中で、本作は良い塩梅を見出し作られている。本作はそうした他の漫画原作邦画に対して、一つの答えを示しているようにも感じる。
また、本作では京香の存在が単なるマスコットやコメディリリーフとして終わらず、登場人物の救いにもなっているのが印象的。過去はどんなに悔やんだところで変えたり逃れることはできないが、捉え方一つで前向きに生きる力にもなる。京香に絵画の呪いが聞かなかったのも、底抜けに前向きで明るい彼女の性格があったからに他ならない(だからこそ露伴が一目置き、雑に扱われ続けながらも担当編集としてやっていけるのだろう)
長尾謙杜演じる青二才露伴がまた可愛らしく、同じ下宿先に住むミステリアスな年上女性奈々瀬に惹かれ、彼女のために一心不乱に漫画を描く姿は何だか微笑ましく見守りたくなった(後の展開でこれが伏線だったと知るが)奈々瀬を演じるのが木村文乃がまた絶妙に幸薄そうな表情で良い。あんな女性が同じ屋根の下にいたら、初な男じゃなくてもそりゃ惚れてまうわ(笑)
ドラマ発の映画で人気漫画が原作と、コケる邦画の王道パターンを全て踏襲しながらも、ドラマ版で魅せたクオリティを上げながら映画として見るに申し分ない作品へと仕上がっている。ドラマ版に引き続き、音楽を担当した菊地成孔氏の音楽も心地よく、エンドクレジットの部分まで楽しむことができた。また内容以外で言えば、客入りは平日昼にもかかわらず中々の盛況ぶりで、客層も老若男女幅広いのも印象的だった点。
本作はテレビドラマ映画が目指すべき理想の姿を体現した数少ない作品と言えるだろう。