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岸辺露伴 ルーヴルへ行くの本好きなおじぃのレビュー・感想・評価

岸辺露伴 ルーヴルへ行く(2023年製作の映画)
4.5
岸辺露伴は、漫画『岸辺露伴は動かない』の主人公で、テレビドラマとしては2020年12月にNHKにて放送されたものを皮切りに、毎年年末の恒例(?)のドラマとして人気を博している。

この映画はそのドラマのスピンオフ的に、製作スタッフは同じくもパワーアップして登場している。

岸部露伴は、漫画を描く際のモチーフで「黒い絵」を追求することにした。担当編集の泉とオークションに出かけた先で出展されていたのは、モリス・ルグランという作家の書いた「黒い絵」だ。謎の2人組の男とのつばぜり合いを経て競り落とした露伴だったが、突然の来客。玄関からはその2人組の男の一人で、同時に、裏口から入ってきたもう一人に「黒い絵」を奪われてしまう。
「この世で最も邪悪な絵」と言われるその絵は、かつて若い頃に出会った奈々瀬という女性に教えてもらった。祖母の家で長く過ごした時にその家にあわせて住んでいたのが彼女で、その一挙手一投足にドキドキしながらも思わず筆を執ってしまうが、奈々瀬とはあるとき連絡が取れなくなってしまう。

そんな淡い思い出を胸に、ルーブルにその謎が隠されるという「黒い絵」を追いかけに、担当編集の泉とパリへ向かう。

そのパリでは、ルーブル美術館で学芸員のエマやキュレーターの辰巳が、「黒い絵」とりわけ山村仁左右衛門やモリス・ルグランが描いたその絵やその背景を探そうとするが、調べようとした美術館職員のジャックが何かを見て転落してしまう。ジャックが見つけていたのは、山村仁左右衛門の黒い絵があるのは「Z-13倉庫」と呼ばれる場所であることだったが、そこは本来使われていない場所のはずで・・・真実を探しに、一行はZ-13倉庫へ向かう。


岸部露伴シリーズ史上、最もぞわっとさせられるのに、温かいヒューマンドラマであるこの映画。露伴の甘い過去の思い出が横たわると思いきやそれだけではなく、彼のルーツが明かされるのだ。

「黒い絵」自体の破壊力はすごい。
この黒い絵が生まれた背景の、哀しさも涙もすべて、露伴自身にも襲いかかるが、それもまた露伴の過去を見つめるきっかけをくれる。

この夏に見るからいい風景もたくさんある!