Ayumi

87分の1の人生のAyumiのレビュー・感想・評価

87分の1の人生(2023年製作の映画)
4.0

薬物中毒というテーマの重さもさることながら、フローレンス・ピューの演技に心をつかまれた。何かを話すときに言葉を探す表情、ショックを受けて相手を睨む目つき、ピアノを弾くときの伸びやかな表情と声、婚約者といるときの幸せそうでおどけた表情。

あらすじは、ピュー演じるアリソンが結婚を控える中、ウェディングドレスの試着のために婚約者の姉夫婦を乗せて車を運転していたところ、不慮の事故で姉夫婦を亡くしてしまう。生き残った罪悪感と悲しみから、アリソンはペインキラーを常用し、薬物中毒になってしまう。ある自助グループを訪れたとき、偶然に元婚約者の父親ダニエル(モーガン・フリーマン)に会って…という話。

ダニエルの孫娘ライアンとの確執、ライブの後のトラブルなど、ところどころ先が読めるところがあるのだが、それぞれセリフの強さが印象的だった。ダニエルは、娘の死亡事故を起こしたアリソンを赦そうとするのだが、やはり許せないという感情と戦っている。アリソンは、薬物から離れようと努力するのだが、婚約者との将来を失った悲しさ、罪悪感が溢れることがある。

悲劇を前にしたとき、人はどう振る舞うべきなのか、人はどう他者を赦すことができるのか、がテーマだと思った。この映画が提示する一つの答えは、最後のダニエルの言葉なのだと思う。
Ayumi

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