回想シーンでご飯3杯いける

87分の1の人生の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

87分の1の人生(2023年製作の映画)
4.0
本作も現時点ではamazonプライムのみで配信されている作品。可愛らしい邦題が付いているが、実際は交通事故によって過酷な運命を強いられた人達の姿を描いた、かなり辛口の映画である。

本作もまた、前回レビューした「慌てず騒がず」同様に、被害者と加害者(厳密に定義するのは難しいが)の関係を描いた作品だと言える。偶然同じタイプの映画が続いたという訳ではなく、そもそも日本映画でこうした目線で作られる映画が少ないというのもあるのだろうし、海外の作品も、日本では結果的にこうして配信オンリーになっているのだから、世界の中で何だか遅れを取ってしまっているような危機感を覚えてしまう。

非常に良く練られた脚本で、事故を起こしてしまったフローレンス・ピューが、関係者と向き合う事の難しさを巧みに描き出している。その中で特に秀逸なのは、モーガン・フリーマンとのやりとり。以前、他のベテラン俳優を指して「共演者の良さを引き出す技術を持ち合わせる」という事を書いたが、本作でのモーガン・フリーマンには正にそれを感じる。他の作品で見せる自由奔放な老人ではなく、元警察官の堅物を演じているのも特徴で、フローレンス・ピューとの言葉少ななやりとりが生み出すドラマは、厳しくも優しい後味を残す。