ベイビー

特別編 響け!ユーフォニアム アンサンブルコンテストのベイビーのレビュー・感想・評価

4.2
待ちに待った4年ぶりとなる新作。
そして久美子が部長になっての新章スタート。

期待していたとおり本当に良かった。今作をもとに来年4月からTVシリーズが始まるとなると、今からワクワクが収まらない。

久美子が部長になって、彼女がより深く部活と関わることになると思うから、久美子からの視点で見る北宇治吹奏楽部の成長は、今まで以上にドラマ性があるものと期待できる。

この「響け! ユーフォニアム」という作品には、いかにも学園ものらしく、部活に総てをかける高校生のキラキラとした美しい青春群像劇が描かれている。しかしここにあるのはそれだけではない。青春の裏側にある小さな問題。縦と横、上手いと下手、好きと嫌い、合う合わない。そんな不可視な不協和音が、雑念となって成長を乱す。

この作品にはそんな、痛み、苦しみ、確執、葛藤というような、部の成長を拒むようなほろ苦い青春がたくさん描かれており、“上手くなりたい”という気持ちに技術が追いつけない部員もいれば、突然覚醒したかのように、ある事がきっかけで急に成長する部員もいる。

その過程を見届けているうち、いつしか彼女たちの痛みや達成感がリアルな形となって、こうして直接胸に響いてくる。実に京アニらしい作品だと思う。

その彼女たちが抱く感情を的確に伝えてくれるのは、すべては作画の美しさにあると思う。

例えば、部員たちが楽器を持って演奏する。正直、一人の演奏を作画に起すことでも物凄く大変な事だと思う。動作のタイミングを計ることすら難しく感じる。

楽器の線を歪めず演奏に合わせて息を吹き、ピストンを動かす。そこに描くのはそれだけではない、その一瞬の演奏シーンの中に、彼女たちがどれだけ楽器を触ってきたか、どれだけ練習をしてきたか、この部員は今何を思って演奏しているか、周りと調和はとれているのか…

そういった脚本には書かれていない部分の描写が、行間を読ませるように事細かに描かれている。一人ならまだしも、合奏シーンとなるとその労力は計り知れない(正直、ラストはメインのチームだけでも演奏シーンを入れて欲しかったのだが)。

アニメーターさんがそれを全て描いている。それは何日もかけて。

きっとその情熱と強い精神が全国大会出場をかける彼女たちの演奏とリンクするのだろう。その一筆一筆に彼女たちの“上手くなりたい”という気持ちが熱く伝わってくる。

また、部員一人一人につけられたキャラ設定が細かく決められていて、今まであまり目立っていなかった部員たちに、突然スポットが当てられるのもこの作品の魅力である。

今作で言えば釜谷つばめ。こうしてモナカメンバーが力を付けてくると、北宇治吹奏楽部の層の厚さが出てくるはずなので、全国大会金賞の夢にまた一歩近づく気がする。

あと脚本もいい。久美子が窓際で話すみぞれとのシーンや久美子とつばめがマリンバを運びながら話すシーンも良かった。言葉の端々に大切な言葉が隠れていて、見ているだけで心が優しくなれる。本当、素晴らしい脚本。それと、久美子と麗奈のイチャイチャはいつまでも見ていられる。

今はまだ前途多難の久美子部長編。
これからどうなるのか、早く第3期が観たい。
ベイビー

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