このレビューはネタバレを含みます
部長として人前に立つことへの不安、作業量の多さに疲れる久美子。
黄前相談所っぷりは健在。
かつて晴香部長が自分に対して言い放った「優しいっていうのは他に褒めるところがない時に言う言葉」
という言葉を、自分が後輩に優しいと言われた時にフラッシュバックさせるのは上手い。
立場の変化や時間の流れを感じさせる。
久美子と麗奈の、コンテストのメンバー決めを巡る些細なすれ違いというか、拗ね合いや意地の張り合いが等身大で良い。
他の部員の成長を見守り応援することに楽しさを見出した久美子もまた成長している。
身体のタイムラグの話と呼吸を合わせる話、演奏中に何に気をつけるかという問題に関しては久美子の指導力を描くエピソードとしても面白いけど、シンプルに音楽の面白さを感じさせる良エピソード。
全体を見て臆することなく的確に問題点を指摘できる麗奈と、
一人一人とじっくり向き合って解決方法を見つけられる久美子。
麗奈は悔しいというけれど、これは単に向き不向きの話で、人にはそれぞれ役割がある。
奏と夏紀の、逆説的に相性のいい二人の様子も面白い。
それから個人的に好きだったのが久美子とみぞれの一幕。
音大進学へ向け、浮雲のように他の生徒とは違う時間軸で独立して存在しているみぞれが、それでもきちんと希美や梨々花との繋がりを離していないのも嬉しい。
そして、ある種距離が生じたかつての世界と今の自分との間にある窓を、今はもう自分で開けようとすることができる。成長。
そしてそこにはもっとスムーズに開けかけた窓を開け放ってくれる久美子がいる。安堵。
言葉にはしないけど、みぞれにとって久美子は一つの救いなんだろうな、と思う。