イペー

ファンタズムのイペーのレビュー・感想・評価

ファンタズム(1979年製作の映画)
3.9
メジャーな話題作の鑑賞が続き、もうひとりの自分が囁く。

「常識あるオトナの振りをするのはお止しなさい、この偽善者!…知覚過敏‼︎」

…ということで、時代に置き去りにされた感は否めない、ファンタジーホラーの傑作『ファンタズム』です。

両親が他界、どん詰まり感の漂う田舎町で兄弟は二人暮らし。
不幸続きの折も折、兄の親友の悲報。

葬儀も終わりかけた頃、弟が目撃した一部始終。
長身、黒ずくめの男が、棺桶ごと死体を運び去ってしまうのであります。

やがて二人の身の周りを襲う、数々の怪異。
平穏な日々を取り戻すべく、事態の元凶と思しき怪人、"トールマン"との対決へと向かうのですが…。

夢かマボロシか?ってな具合でストーリーの輪郭はボンヤリ。
恐怖の演出も"物陰からヌーッ"ばっかしで、どうにも野暮ったい。

「フムフム、よくある低予算B級ホラー」…では片付けられない魅力…‼︎

主人公であるマイク少年が味わう、変テコで不気味な出来事。
その向こう側に、あまりにも哀しくシビアな現実が、透けて見えてくる仕掛け。

思春期の訪れを前に、繊細な心は"タナトス"と出逢ってしまった。
少年時代の混乱と葛藤を、そのまま密封したかのようで、本作はどこか儚い。

脈々と受け継がれるホラー映画の本流からかなりズレちゃってるし、SFXだって今見たらショボいし…。
オススメはしません!
でも、個人的には大好きな部類!

奇天烈でセンチメンタル。
いかがわしくて叙情的。
宙を舞う殺人ボールの放つ、昏く妖しい輝きに、すっかりと魅了された秋の夜更けなのでした…。

…世間を賑わすハロウィンとは無縁な自分ですが、先日、年若い女子に「ゾンビの仮装とか似合いそう」との評を頂きました。
うん、褒められてないね!多分ね!
イペー

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