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風の谷のナウシカのhasseのレビュー・感想・評価

風の谷のナウシカ(1984年製作の映画)
3.8
演出5
演技3
脚本4
撮影4
音楽3
照明-
インスピレーション4

王蟲、森へお帰り。ここから先はあなたの世界ではないーー

序盤にナウシカが放つ、有名な台詞。この言葉は、この映画の本質を体現している。
この映画の根幹にあるのは、二つの世界の衝突だ。
人間が住む世界と、腐海と呼ばれる、細菌に覆われた、蟲が蠢く世界。
一方が双方の境界線を侵犯する時、もう片方がその境界線を引き直すべく反逆を起こす。
劇中では、腐海の消滅を願う人々が次々に行動を起こす。ナウシカはそれを身を呈して止めようと腐心する。
ナウシカが目指すのは、もちろん人間の世界が腐海の世界を併呑することではない。単純な言葉でいえば、二つの世界の「共生」だが、厳密に言えば、段々と綻び、歪んでしまった二つの世界の境界線をあるべき形に引き直すことだ。
二つの世界は、地下で繋がっている。いずれ長い時間をかけて、二つの世界は表層的にも一つになる。しかし、今はまだその時ではない。
ナウシカの慧眼はそれを見抜いている。

この映画において青と赤の色彩が象徴的だーー王蟲の目、ナウシカの服ーー青は相手への許し、寛容、承認を意味し、赤は相手への攻撃や説得、怒りを想起させる。
二つの世界の境界線を成り立たせるためには、どちらか一方では不可能だ。母性原理、父性原理のバランスによって成り立っていることを示唆している。
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