とむ

ザ・キラーのとむのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
3.5
予告編を見た感じ「これが俺の仕事だ」とでも言わんばかりに残虐非道な"業務"を事務的なまでに淡々とこなす様を描き、観客はその価値観の違いに戦慄させられる…
みたいな構成なのかな〜と想像していたのですが、いざ見てみるとかなり印象が違いました。
どちらかというと「殺し屋を主体にしたVlog」という感触。

それくらい描き方が冷たい印象で、あくまで殺し屋という"職業"として俯瞰的に描いているのが新鮮でした。
スマートウォッチを使って健康管理をしていたり、Amazonでハッキング用のアイテムを入手したり、「ガジェット系YouTuberか?」と笑っちゃうくらい現代のテクノロジーの恩恵を享受していて、もはや殺し屋がクリエイティブな職業にすら感じるくらい洗練されてた描き方でしたね。

「退屈が我慢できない奴は向いてない」って言葉もそれに拍車をかけてる気がします。


また、それらを強調するかの様に"働く"人間たちのそれぞれの矜持みたいなものを執拗なまでに見せてくれるのも興味深かった。

若いタクシードライバーの"職場"であるタクシーの車内がどういう整頓のされ方をされているかとか、
その他の弁護士や依頼主がどうだとか、
「どういう環境で働いている人間が、どういう日常生活を送っているか」というところに着目してみるのも面白いかもなと思いました。


ただ、びっくりするくらい静かで淡々としてるんですよね。そこはかなり好みが割れると思いました。
冒頭で「Vlogみたい」と言ったのはその印象もあるのかなーと。

Netflix出資の作品ではあるけど劇場で見るのが正解だと思いました。
Netflixだとこれ途中で集中できなくなっちゃうでしょ笑


個人的に、ホテルのドアノブにコップとクローシュ(料理に被せるやつ)を使ってセキュリティアラーム的なのを作ってるシーンが映画的な嬉しさが感じられて好きでした。
ああいうディテールを特別な説明なしに見せてくれるのが映画の喜びだよなぁ。
とむ

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