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ザ・キラーのマのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
4.5
ファイトクラブのタイラーダーデンが作品の意図していない形で単純に象徴化され、(本来はエドワード・ノートンがそれを乗り越える話なのに)その加害性をインセルやミソジニストに称えられてるのはもうお馴染みになってきてるけど、まさにそれをバカにするようなふざけた冒頭。
「俺の哲学」「俺の流儀」をタイラーダーデンのように長々と語る(ファイトクラブとは対照的に)"資本主義"の奴隷のオッサンが仕出かすしょうもな過ぎるミス、というか安心して何かを語り出した途端にミスを起こしちゃうアホ、キリッとしてるはずのマイケル・ファスベンダーの表情や姿勢、銃の持ち方すら何故かマヌケに見えて来る。

問題はその時に起こるのではなく、それ以前以後に既に起きている と言う通りに演出がぐちゃぐちゃに乱れ主人公の行動やその後を暗示する デジタル的な質感で映画を観る強いメリットを感じて気持ち良かった。

カタルシスが殆どない終盤の展開はまさに、単純な強さへの強いアンチだと思う。
色々な偽名を持ってることがそのまま数ある内の... へと繋がるよね

資本主義に組み込まれ、機械的にしか生きてこなかった男が初めて自分の意思で行動し 真に人生を獲得する という意味では逆回りで同じ結果に行き着くファイトクラブなのかも。
復讐(=殴り合い)を通り、巻き込まれただけの一般人を殺しまくってからの徐々に人間性を取り戻した上で 最後はクライアントと(ファイトクラブと同じく高層ビルで)正面から向き合い自分の加害性を押し潰す 例え後々組織に殺されるとしても、社会と自分に勝利した以上ハッピーエンド。
やっぱり小物感満載のクライアントと主人公が 互いに対等な相手の様な構図で向き合うカットが挟まれてるのは印象的。

...もしくはラストの痙攣が示すように、ティルダ・スウィントンの語りが示すように、わざと失敗を繰り返して理由を作り、社会に適応するための理論を自ら裏切り、「暗殺」ではなく「殺人」に目覚めてしまう 真に社会のコントロールを得てしまう怖い映画なのかもね
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