はんそく負け

ザ・キラーのはんそく負けのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
3.2
冒頭からファスベンダーによる神経質な一人語り、あるいは音楽を聴く行為によってこの主人公はひどく内省的であることを提示。そしてやはりというべきか、物語は個人のものになっていく。隠れ家に戻った際爆音で鳴り響く音楽、血痕、割れたガラス。襲撃の犯人もやはりそういうタイプの人間で(無論悲鳴を掻き消すためでもあろうが)、要するにデカくてマッチョで粗暴な男なのだが、細身で内向的な男がそういう輩に立ち向かって勝つというような、幻想めいた物語をフィンチャーは今も信じている、ということに胸を打たれる。